署名活動には〈もう税金は払わない〉〈納税拒否運動のような行動はできないのでしょうか〉といったメッセージが数多く届いていた。だが、佐川長官の任命責任を問われた安倍首相は12月4日の参院本会議で、「適材適所だった」とそしらぬ顔だ。

 こうした政府の高圧的な態度に、これから現場で増税をお願いする立場となる税務署職員が批判の矢面に立たされている。

 税務署職員の労働組合である全国税労働組合は、10月に佐川長官と面会して組合員の声を直接伝えた。納税者に領収書の不足を指摘すると「おたくのトップは認められるのに」と言われたり、税務関係の資料について「来年からは提出しない。信用できない」という批判があったりしたからだという。

 前出の醍醐氏は言う。

「公務員は『国民全体の奉仕者』であり、一部の人のために働いてはいけません。ところが、佐川氏は上司と自己保身のためだけに仕事をしていたと思わざるをえない。また、佐川氏は国税庁長官に就任以来、記者会見も開いておらず、疑惑を晴らして国民との信頼関係を築くつもりもない。国民からの信頼関係がなくては税務署の仕事は成り立ちません」

 森友疑惑については、会計検査院による調査報告でも、8億円の値引きについて「根拠が不十分」と指摘されている。また、12月8~10日に実施されたNHKの世論調査では、国民の66%が「適切ではなかった」と答えている。

 ところが、安倍首相は批判はどこ吹く風で、早々に幕引きをしたいようだ。

 そのことを象徴的に示す例がある。公文書管理法第8条の規定では、内閣総理大臣は各大臣に記録文書の保存を命じることができる。そこで、6月4日の決算行政監視委員会で民進党の篠原豪衆院議員(当時、現・立憲民主党)が安倍首相に対し、森友疑惑に関する資料の保存を財務省に指示するよう求めたところ、「措置をとる必要性はない」と拒否。この頃は、財務省の職員用パソコンの更新時期だったが、疑惑解明につながる資料が廃棄された可能性もある。

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責任をなすりつけられた官僚に同情する声