グランプリファイナルで平昌へ弾みを付けたい宇野(写真:Getty images)
グランプリファイナルで平昌へ弾みを付けたい宇野(写真:Getty images)

 近年フィギュアスケート・男子シングルでは、ひとつのプログラムの中で跳ぶ4回転ジャンプの種類・本数が加速度的に増えている。平昌五輪シーズンである今季、ケガや演技中の危険を伴う失敗など様々な形でその過酷さが表面化しているが、宇野昌磨はその難しさに真正面から取り組み、シーズン前半を闘ってきた。

 “4回転競争”の先頭集団に位置する宇野は、4回転をショートでは2本、フリーでは4本組み込んでいる。シーズン前には「今一番足りないものが体力」としていたが、同時に「体力をつけるというより、疲れているところで跳べるようにするのが重要になってくる」とも語っている。

「体力をつけるというと最後まで楽に滑る、というイメージなんですけど、僕はきつくてもその中で跳ぶ。(4回転)ループもフリップも、万全の状態じゃなくても跳べるようにしたい」

 自己最高得点を更新した初戦のロンバルディア杯、そしてグランプリシリーズ初戦のカナダ大会では高い確率で4回転を成功させ、2試合とも合計点を300点代に乗せた宇野。高難度のプログラム構成が無謀ではないことを証明したが、「万全ではない状態でも4回転を成功させる」という課題の達成度が、思わぬ形で試されたのがグランプリシリーズ2戦目のフランス大会だった。

 練習の虫として知られる宇野だが、カナダ大会後インフルエンザにかかり4日間寝込んでしまう。十分に準備できないまま臨むことになったフランス杯は大会後、「これ以上に辛い試合は今後一切ない」と口にするほど、宇野にとっては厳しい試合となった。しかし、苦しそうに滑りながらも、宇野はプログラムの構成を下げず攻める姿勢を貫く。結果としてはやはり本来の出来ではなく、ショートでは冒頭の4回転フリップ、フリーでは後半の4回転トゥループ、トリプルアクセルからの連続ジャンプで転倒。ただ、ショートでは4回転トゥループ-3回転トゥループ、またフリーでも冒頭の4回転ループ、2度目の4回転トゥループを成功させるなど粘り強さも見せている。

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