アホが絡んできて、相手を挑発しない程度に毅然たる姿勢を見せながら「スルー」を決め込むのだ。アホを利用するために仲間に引き入れる時も、あくまで凛とした立ち居振る舞いを保つことだ。それでも、アホの有力ないじりターゲットである「いい人」や「弱い人」に見られてしまったら、これはどこかでファイティングポーズをチラ見せしないといけない。

 目的は挑発や戦って勝つことではない。勝ってもさらに陰湿に憎まれたりしたら、何のために戦ったのか意味がなくなる。目的は「こいつを怒らせたらやっかいだ」「絡むターゲットは他に求めた方がいいかな」と思わせることだ。

「私はあなたと戦ったりするような無駄は絶対しませんが、あんまりいやらしいとやるときはやりますよ」と心で常に唱えておくのだ。そうすればそれは相手が感じてくれるようになる。アホと戦ってはいけないが、舐められるのもよくない。舐められることが戦いの原因を作ってしまっているともいえる。

 人生は宝物のようにとても貴重なものである反面、非常に複雑なゲームでもある。だから飽くことなく楽しいのである。人生で出会うことも生き方も白黒ではっきり分けられるようなものではない。白も黒も両方あるのが人生なのだ。「アホとは絶対戦わない」気持ちをもちながら「絶対戦いたくないけど、どうしようもないほど仕方ない時は、やるときはやるよ」という姿勢も保持しよう。

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田村耕太郎

田村耕太郎

田村 耕太郎(たむら・こうたろう)/国立シンガポール大学リー・クアンユー公共政策大学院兼任教授。ミルケン研究所シニアフェロー、インフォテリア(東証上場)取締役、データラマ社日本法人会長。日本にも二校ある世界最大のグローバル・インディアン・インターナショナル・スクールの顧問他、日、米、シンガポール、インド、香港等の企業のアドバイザーを務める。データ分析系を中心にシリコンバレーでエンジェル投資、中国のユニコーンベンチャーにも投資。元参議院議員。イェール大学大学院卒業。日本人政治家で初めてハーバードビジネススクールのケース(事例)の主人公となる。著書に『君は、こんなワクワクする世界を見ずに死ねるか!?』(マガジンハウス)、『野蛮人の読書術』(飛鳥新社)、『頭に来てもアホとは戦うな!』(朝日新聞出版)など多数

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