田村耕太郎氏が勧めるハリネズミ作戦とは?(※イメージ写真)
田村耕太郎氏が勧めるハリネズミ作戦とは?(※イメージ写真)

「この本は『不戦の書』である」

 元政治家であり、現在はシンガポール・リークワンユー政治大学院で教鞭を執る田村耕太郎氏がそう表する自著『頭にきてもアホとは戦うな!』(朝日新聞出版)は、“アホ”と戦わないための本だ。

 田村氏は「人生で最も貴重な資産は『時間』」だという。さらには、その貴重な資産をアホのために使うこと以上にもったいないことはこの世に存在しない。アホは上手にスルー。それなりに力があって利用価値のあるアホは、こちらがコントロールできる戦術でこちらの仲間に引き入れて活用すべきだと主張する。

 アホから逃げることはできるが、アホを活用するにはどうすれば良いのか? 「一見矛盾するかのように聞こえるかもしれないが、『不戦のために』こそ、『ファイティングポーズ』を時には見せないといけない」。そう話す田村氏が勧めるのが、ハリネズミ作戦。その典型がスイスという国家だという。

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 スイスが永世中立国であることは広く知られている。ではスイスは「日本の憲法第9条」のように平和を唱えているだけの国家なのであろうか? 答えは否だ。スイスは国民皆兵。国民が全員軍事教練を受ける義務があり、全戸にマシンガン含めて武器が配備され、ほぼ全戸に核シェルターが設置されている。「平和を貫くために武装している国家」なのだ。しかし、隣国を挑発したり、追い詰めたり、そんな姿勢は見せない。いざとなれば戦う姿勢をチラ見せしているのだ。

 我々もアホに対しては、スルーや活用を目指すべきだが、武装しているところをチラ見せしないといけない。挑発したり、追い詰めたりすることは、厳禁だが、「やるときはやるぜ」という姿勢もチラ見せすることはとても有効である。

 アホと戦わないことを目指すあまりに、過剰にいい人に見せたり、アホから逃げる姿勢が弱みに見えたりすることは避けないといけない。アホは本来暇でガッツがない人物なので、「いい人」や「弱い人」はいじめたくなったりいじりたくなったりする傾向があるのだ。

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田村耕太郎

田村耕太郎

田村 耕太郎(たむら・こうたろう)/国立シンガポール大学リー・クアンユー公共政策大学院兼任教授。ミルケン研究所シニアフェロー、インフォテリア(東証上場)取締役、データラマ社日本法人会長。日本にも二校ある世界最大のグローバル・インディアン・インターナショナル・スクールの顧問他、日、米、シンガポール、インド、香港等の企業のアドバイザーを務める。データ分析系を中心にシリコンバレーでエンジェル投資、中国のユニコーンベンチャーにも投資。元参議院議員。イェール大学大学院卒業。日本人政治家で初めてハーバードビジネススクールのケース(事例)の主人公となる。著書に『君は、こんなワクワクする世界を見ずに死ねるか!?』(マガジンハウス)、『野蛮人の読書術』(飛鳥新社)、『頭に来てもアホとは戦うな!』(朝日新聞出版)など多数

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