天を仰ぎながらマウンドを降りるソフトバンク・千賀 (c)朝日新聞社
天を仰ぎながらマウンドを降りるソフトバンク・千賀 (c)朝日新聞社

 ファイナルステージ(FS)は4戦先勝。さらにソフトバンクにはリーグ優勝による1勝のアドバンテージがあるため、最短だと3試合、長くても6試合の「短期決戦」だ。

 143試合制のシーズンは、桜の咲くころから、梅雨、盛夏もまたぎ、涼しい秋風が吹く季節まで、およそ半年にわたる長丁場だ。ゆえに、選手の疲労度や調子、故障者など、先々を見越した上で、大量失点を喫したゲームなどでは勝ちパターンのリリーバーをつぎ込まずに主力打者も途中交代で休養させる、いわば捨てゲームを作ることもある。目先だけにとらわれず、シーズンをトータルで考えれば、後々に十分取り返すだけのチャンスがあるからだ。

 しかし、クライマックスシリーズ(CS)のような短期決戦は違う。FSは最大でも1週間に満たない。その短い間に、例えばレギュラー選手に故障やケガなどのアクシデントでも起これば、復調するための猶予すらない。だからこそ、現有の戦力で目の前の試合を取れるときには、なにがなんでも取りに行かなければならない。序盤のビハインドでも早めに手を打ち、勝機を見いだしていく必要がある。

 シーズン中と短期決戦で視点が変わってくるのであれば、必然的に戦略も変わる。それはイコール、指揮官の采配も選手の起用法もシーズン中とは違ってきて当然ということなのだ。

 18日のFS初戦。ソフトバンク・工藤公康監督も短期決戦を意識した、いつもと違うタクトをふるった。楽天に3点をリードされて迎えた六回、先発の東浜巨が2死三塁のピンチを招いた。佐藤義則投手コーチが、一塁側ベンチを出てマウンドに向かった。打者は4番のゼラス・ウィーラー。直前の四回の打席で本塁打を許しているとはいえ、シーズン中ならエース格の右腕をイニング途中、走者を残したままの場面で降板させることは、まずあり得ない。

 仮にリリーバーをつぎ込み、そこで失点するようなことがあれば、降板した先発投手もリリーバーも「やられた」というダメージが残る。この世界では“どちらも死んでしまう”といわれ、基本的には避ける手だ。つまり、先発投手がケリをつけるのが通常の起用法でもある。

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