アメリカの子育て専門家であるドロシー・ロー・ノルトさんが書いた「子は親の鏡」という有名な詩があります(ウェブでも読めます)。この詩には、親が褒めてあげれば明るい子が育つ、とげとげした家では乱暴な子が育つとあります。悲しい話ですが、家庭内暴力を受けて育った子どもは、自分の子どもにも暴力をふるってしまうことが多いということは統計的に明らかにされています。「真似」をプラス方面に向かうようにして、「怒るときは感情的に大声を出すもの」という認識が頭の中に組み込まれなければ、子どもの中にもそんな常識は芽生えないわけです。

 私の母親は怒るとすぐ大声になるのですが、それはやはり姉や私にも伝染しました。そのことについて「なんですぐ大声で怒るの」と母親に文句を言って突き詰めたことがあります。結果、母方の祖母がよく怒鳴る人だったと気づきました。そんなうちとは反対に、非常にもの静かな家庭で育った夫は、ほとんど怒ったところを見たことがないほど穏やかです(まあ、そんな夫とでさえ現在別居中なわけですが、そこはおいておきましょう)。

 感情的に大声を出して怒るのは、威嚇と同じ。相手をおどして萎縮させるための行為です。子ども側にだって考えていることがあり、言いたいことがあるでしょうが、大人である親の怒鳴り声に勝てるわけがありません。ハッキリ言ってしまえば、事前に勝負の決まっている一方的な戦いです。過去に、大江健三郎先生も講演で、「親による子への力で押さえつける行為は、将来的なイジメや戦争の縮図だ」とおっしゃっていました。

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