一方、ラムシルマブは「血管新生」を阻害する薬剤で、こちらも他の抗がん剤とともに使用される。がん細胞の周囲には、がんに栄養や酸素を供給するための新しい血管が作られる(血管新生)。それを阻害することで、がん細胞に栄養や酸素が行かないようにしたり、異常な血管を正常化して抗がん剤の効果を高めたりして、増殖を抑制する仕組みだ。

「使用できる薬剤が増えるに従って、組み合わせや順番など使い方の選択肢も増え、患者さんの状態や適応に合わせたオーダーメイドの治療が可能になると期待されています。その実現に向けて、さまざまな臨床研究や治験がおこなわれています」(設樂医師)

 免疫細胞には、自分のからだへの攻撃を抑制する機能がある。がん細胞は自分のからだの一部なので、免疫細胞のPD-1というたんぱくががん細胞のPD-L1と結合すると、攻撃にブレーキがかかってしまう。免疫チェックポイント阻害剤のニボルマブ(同オプジーボ)はこれらの結合を阻害し、ブレーキがかかるのを抑制して免疫細胞ががん細胞を攻撃できるようにする。皮膚がんの一種である悪性黒色腫や非小細胞肺がんなど、さまざまながんで有効性が認められ、治療に使用されている。

「胃がんでもニボルマブの治験が終了し、国の承認を得たところです。臨床研究では、胃がんの縮小や進行を遅らせる効果が確認され、承認後は、現在おこなわれている3段階の薬物療法の、3番目以降での使用が推奨されると考えられます」(同)

■手術前の薬物療法で予後を改善

 薬物療法と手術を組み合わせることで、進行胃がんの予後を大きく改善したり、ステージⅣで切除不能だったがんを切除できるようにしたりし、治癒の可能性も探るという治療方法が検討されている。それが、術前化学療法(NAC)とコンバージョン手術である。

 NACは、スキルス胃がんや、8センチ以上の大きな潰瘍(かいよう)を作るがん、多くのリンパ節に転移しているがんなど、手術は可能であるものの、その予後が極めて悪いがんが対象となる。通常は手術の後、再発予防のために薬物療法をおこなうが、NACは先に薬物療法をおこなってがんをたたいておき、そのあとに手術で切除する方法だ。

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