コトラーの『マーケティング3.0』と『マーケティング4.0』(撮影/写真部・小山幸佑)
コトラーの『マーケティング3.0』と『マーケティング4.0』(撮影/写真部・小山幸佑)
恩藏直人(おんぞう・なおと)/早稲田大学商学学術院教授。博士(商学)。1982年早稲田大学商学部卒業後、同大学大学院商学研究科を経て、1996年より教授。専門はマーケティング戦略
恩藏直人(おんぞう・なおと)/早稲田大学商学学術院教授。博士(商学)。1982年早稲田大学商学部卒業後、同大学大学院商学研究科を経て、1996年より教授。専門はマーケティング戦略

 朝起きて、まず何をするだろうか? スマートフォンを手に取ってSNSをチェックしたり、ニュースを見たり……。現代はまさに「デジタルが当たり前になった社会」だ。そのような時代において、デジタルはビジネスにおいても大きな武器となりえる。

 では、どう取り入れればいいのか。その回答の一つが今回取り上げる『コトラーのマーケティング4.0 スマートフォン時代の究極法則』である。同書の監訳者、早稲田大学の恩藏直人教授にマーケティング4.0で語られているデジタル時代に対応するとは具体的に何なのか聞いた。

「スマホ時代のビジネスに必要な“究極法則”とは? マーケティング4.0に学ぶ」よりつづく

*  *  *

――コトラー教授が提言する「マーケティング4.0」とは、「デジタル時代のマーケティング」だと教えていただきました。デジタル時代に対応するというのは、具体的にはどのようなことなのでしょうか?

 そんなに難しいことではありません。例えば早稲田大学では、2017年度から入試の出願手続きをWebでできるようにしました。早稲田は大きな大学なので準備に時間がかかりましたが、もっと対応の早かった大学もあります。これもひとつのデジタル時代への対応です。

 一人の生活者として自分の行動を考えてみてください。もはやデジタルと切り離した生活は考えられませんよね。何か商品を選ぶとき、ネットでクチコミをチェックするのは当然ですし、たまたまSNSで友人が勧めているのを見て、思いもよらなかった商品をほしくなることもあります。

――なるほど、まさに“あるある”ですね。

「日本中の人が一斉にテレビCMで新商品を知る」、なんていう時代を経験していない人が増えていると思います。でも、昔はそうだったんです。

 BtoBであっても、かつては展示会やセミナーが新規顧客の候補と出会う場として一般的でしたが、今では潜在顧客との最初の接点がデジタルであることも珍しくない。もっと言えば、潜在顧客が興味を持ちそうなテーマを記事コンテンツの形にして読んでもらい、じわじわと自社との距離を縮めていくようなコンテンツ・マーケティングの手法が、BtoCだけでなくBtoBの領域でも有効に機能するようになっているのです。

 一言でいうと、このような「変化している顧客の行動」に沿うことが大事です。商品の購買、あるいは入試の出願手続きでもいいのですが、あるテーマで顧客がどのように行動するのかという動きは、「カスタマー・ジャーニー」と言われています。これが大きく変わっているんです。

――カスタマー・ジャーニー、“顧客の旅”というんですね。それがどう変わっているのでしょうか?

 コトラー教授は『マーケティング4.0』の中で、変化の一つとして、顧客がオンラインとオフラインを自由自在に動くようになっていると述べています。マス広告で商品を知り、店頭で買う、というアナログの時代から、ネット上で日ごろから企業の評判を感じ、SNSで商品を知り、ネットで情報収集をして、店頭で実物をチェックしてからECサイトで買い、感想をクチコミする……当たり前のようにおこなっていると思いますが、すごく複雑にデジタルとリアルを行き来しているんです。今日、この行き来が何通りもあるのです。

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