横浜スタジアムのスタンドを青く染めるファン (c)朝日新聞社
横浜スタジアムのスタンドを青く染めるファン (c)朝日新聞社

 今季のプロ野球では11球団がすでに観客動員100万人を突破(8月8日時点)、8日に開幕した高校野球もうなぎのぼりの人気と、日本全国で球場に足を運ぶファンが年々増えている。反面、野球の競技人口減少が顕著だ。

 特に深刻なのが小中学生で、この10年間、右肩下がりとなっている。2007年と2016年の人数を比べると、小学生は31万5316人から25万5332人、中学生は34万8244人から23万4316人に減少した(軟式と硬式を合わせた人数、出典元は全日本野球協会)。

「野球をやったことのない人が多くなると、せっかく根付き始めた、スタジアムで野球を観戦していただく文化が衰退することになります」

 そう危惧するのは、横浜DeNAベイスターズの岡村信悟社長だ。「球団経営という観点からも危機意識がある」と同社長が話す理由は、このまま減少傾向が続くと選手のレベルが落ちて魅力低下、観客動員減少という事態が考えられるからである。

 少子化は日本全国で進むなか、「野球は他のスポーツより減少スピードが速い」(岡村社長)。

 さらに、子どもの野球離れには、さまざまな要因が絡み合っているから厄介だ。

 その一つが環境面で、バットや硬いボールの使用が禁止される公園が多く、空き地の減少によって野球遊びをできる場所が数十年前より極端に減った。加えてテレビの地上波からプロ野球中継が極端に減少したのに対し、1993年に誕生したJリーグの影響などでサッカー人気が高まっている。野球に触れる機会が絶対的に少なくなると同時に、相対的にはスポーツの多様化が進んでいるのだ。

「ポイントは、いまの子どもたちが幼少期に野球をやっていないことです」(岡村社長)

 笹川スポーツ財団が2015年に実施した『4〜9歳のスポーツライフに関する調査』によると、未就学児の習いごとで、野球はランキングの10位以内に入らなかった。この調査で上位だった水泳やサッカーと異なり、野球は未就学児にアプローチできていないため、全体の競技人口も減少傾向にあると考える関係者は少なくない。

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