■20代の乳がんは「遺伝」の可能性高

 HBOCの人の場合、一生のうちに乳がんを発症するリスクは一般の人に比べて約10倍だ。治療後、温存した乳房に新たながんができる可能性や反対側の乳房でがんを発症する可能性のほか、卵巣がんにかかるリスクも高い。

 ただし、まだ欧米人を対象にしたデータしかなく、日本人については現在調査が進められている。

 昭和大学の中村清吾医師は、「日本人でも、乳がんの人全体のうち5~10%が遺伝性というのはおそらく間違いありません。しかし、日本人のHBOCの人が一生涯のうち乳がんや卵巣がんを発症するリスクがどれくらいあるかがわかってくるのはこれからです」と話す。

 また、一般的には乳がんは45歳以上に多いが、HBOCの人では若いうちにがんを発症しやすい。

「HBOC、特にBRCA1遺伝子の変異では、75%が50歳未満で発症しており、40歳未満の人も35%と、明らかに若いうちに発症しています。20代で発症した場合は、遺伝性が強く疑われます」(中村医師)

 HBOCの診断にはBRCA1/2遺伝子検査を受ける必要がある。しかし、現在のところ健康保険は適用されず、20万~30万円と高い費用がかかる。主にがんの家族歴がある人に対して勧められているので、家族歴をできるだけ正確に担当する医療者に伝えることが望ましい。

「自分の身内にがんの人はいませんか?と聞かれてすぐ答えられる人は少ないのですが、祖父母や兄弟姉妹、できればいとこまでわかれば、より正確にがんのリスクがわかります。親戚のがんについてもお父さんやお母さんを通じて確認してもらうとよいでしょう」と、中村医師はアドバイスする。

 一方、HBOCは決して女性だけの遺伝病ではない。BRCA1、BRCA2の遺伝子変異は男性にもあり、男性乳がんや、前立腺がんなどにかかりやすい。父から娘に受け継がれて乳がんや卵巣がんにかかることもある。

「チェックリストに一つでも該当し、ご自身が心配であれば、遺伝カウンセリングをおこなっている病院で自分のリスクがどの程度なのかをきちんと知るとよいと思います」(中村医師)

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