子どもたちの稽古はこの「基本技」だけで終了する。小学5学年になると身を守る用具をつけ、試合形式の稽古も取り入れていくという。

■突きを受けるのはやはり怖い

 大人たちは用具を纏い、試合形式で互いに突き合う。その光景は圧巻だ。熟練者が突きを放てば、木銃の先端は目で追えない。だが、それを捌き、すぐさま反撃を見舞う相対者。木銃同士がぶつかり合う音、踏み込みの音、身体と身体が衝突する音、そして咆哮が稽古場に満ちる。

 記者が試合形式の稽古に参加することはできなかったが、用具を着用し、実際に人を突くことは体験できた。さきほどの「基本技」の動作で渡邉さんの上胴(心臓部)を突く。最初は腰が引けて、突きに勢いがでない。十数回繰り返し、ようやく合格をもらうことができた。

 次は記者が突きを受ける番だ。用具があるとはいえ、やはり恐怖を感じた。剣道にも突きはあるが、刀は竹製。重い木製のものを使う銃剣道の突きは、まったく異なるように思える。「ヤァッ!」という気合いとともに、上胴に突きが命中した。身体が浮くような衝撃を受ける。痛みはないが、後ろへ倒れそうなほどの勢いだった。

 これを中学校で学ばせることに危険はないのだろうか。

「中学校で学ぶ銃剣道は、1・2年生の場合、相手はつけず、「基本技」と「形」のみで行います。実際に身体は突かないので、危険は少ないはずです。中学3年生の場合、選択によっては用具を着けて実際に突くこともあります。しかし、用具が厳重なため、銃剣道は他の武道よりもケガが少ないんですよ」(渡邉さん)

 中学校の新学習指導要領に明記されたことで、銃剣道を取り巻く視線が変わったことは、競技者たちも理解しているという。いくつかの批判について、渡邉さんに考えを聞いた。

 まず、指導者の確保が難しく、一部では、中学校のカリキュラムに組み込むことで自衛隊関係者の天下り先を確保する狙いがあるとの意見も出ているが、実態はどうなのか。

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