さらに想定外だったのが、「3日前にオマーン戦から帰ってきて疲れているし、ラマダンで断食の影響もある」(アイマン・アルハキム監督)というシリアが、試合開始からハイペースのカウンターを繰り出したことだ。ボールを奪うと前線の3人はもちろん、両サイドバックも果敢に単独ドリブルを仕掛けてくる。こぼれ球もデュエルを発揮してマイボールにしてしまう。まさに、イラク戦を想定するにはもってこいの相手だったが、日本は前半、後手後手に回ってしまう。

 そんな日本が息を吹き返したのは、後半開始から久保に代わって本田と、後半8分に山口と交代した井手口陽介、さらに1-1とした直後に原口と交代した乾らの活躍だった。井手口は代表デビュー戦とは思えない冷静なビルドアップでチームに落ち着きをもたらし、本田は視野の広さと得意のキープ力、大きなサイドチェンジなどで攻撃に変化をつけた。そして乾である。原口がカットインを得意とするなら、乾はスペースがないように見えてもタテへと突破できるスキルを実証。シリアが急きょ乾をマンマークするDFを入れたほど脅威となっていた。

 課題と収穫の相半ばしたシリア戦であり、相手は2次予選で対戦した時(3-0、5-0)よりも確実に成長していた。この試合がテストマッチで良かったと思っているのは、私一人だけではないだろう。(サッカージャーナリスト・六川亨)