早稲田実・清宮幸太郎(c)朝日新聞社
早稲田実・清宮幸太郎(c)朝日新聞社

 4月16日、東京都高野連は23日に神宮第二球場で行われる予定だった春季東京大会の決勝戦を27日の午後6時からに変更すると発表した。

 清宮幸太郎擁する早稲田実が決勝戦に進んだ場合、収容人数の少ない神宮第二球場では観客が入りきらないことが予想されるためである。発表時点では早稲田実が準決勝で敗退する可能性もあったため、この決定を疑問視する声も上がったが、異例中の異例であることは間違いない。そして早稲田実は22日の準決勝で国士舘を相手に最大5点差を逆転し、秋に続いての都大会制覇に王手をかけることになった。

 この春の清宮を振り返ってみると、その成績を見ても決して順調ではなかったことがよく分かる。センバツでは二本の長打を放ったもののノーアーチに終わり、都大会でも最初の3試合で長打は1本と明らかに本来のバッティングではなかった。長いトンネルからようやく抜け出したのは準々決勝の対駒大高戦。第三打席で詰まりながらも高校通算80号を放つと、次の打席でも合わせたようなスイングながらセンター後方へ運んでみせた。そして準決勝では追撃の一発となる特大アーチを放ち、復調を印象づけた。チームも清宮のホームランの出た二試合で30得点と打線が爆発し、連続コールド勝ちをおさめた。これを見てもやはり清宮のチームだということがよく分かるだろう。

 これで都大会では秋から通じて10連勝となった。高校生活最後となる夏の選手権大会でも西東京の優勝候補であることは間違いないが、甲子園への道は決して楽なものではない。そこでここでは夏にライバルとなりそうなチーム、選手について触れたいと思う。

 まず、最大の強敵は秋に続いて春でも都大会の決勝戦で対戦することになった日大三だ。秋はまだまだ未完成なチームという印象だったが、一冬超えて投打ともに大きくレベルアップしてきた。俊足巧打の井上大成は出塁率が高く、櫻井周斗、金成麗生、比留間海斗のクリーンアップも迫力十分で、春の都大会では準決勝までの5試合で59得点を叩き出している。下位にも力のある打者が多く、打線では早稲田実にも引けをとらない。そして大きいのがエース櫻井の存在だ。終盤に崩れることが多くスタミナ面に課題は残るものの、清宮から5三振、安田尚憲(履正社)から3三振を奪ったスライダーのキレは間違いなく超高校級。チームとしての総合力では早稲田実を上回っている感もある。

著者プロフィールを見る
西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

西尾典文の記事一覧はこちら
次のページ