サビプリウスのより詳細な写真を見せてもらったが、少なくとも写真で見る限り、プリントとは思えないほどのリアルさだ。

「実際、かなり近づかないとプリントだとわからないと思います。駐車していると触って確かめようとする人もいるくらいですから。でも普通のツルツルしたボディーです」

 作り方は、まずさまざまな風合いのサビの画像データを用意し、画像編集ソフトで車の形状をイメージしながら形を整えていく。それをカーラッピング用の白いシートにプリントし、車全体に貼り付けるという。

「サビをいかにリアルにみせるかがポイント。例えば、車が雨に濡れると窓のふちから雨水が下に流れますよね。プリウスの窓枠から垂れるようにサビが描かれているのはそれをイメージしてのこと。納得のいくサビをつくるのに10時間くらいかかりました」

 その“サビ愛”には脱帽せざるを得ないが、この車を運転していてトラブルなどはないのだろうか。

「よく福島から東京まで仕事にいくのですが、高速のパーキングで止めるたびに多くの人に話しかけられるので到着がかなり遅くなりました(笑)。週に一度は『水没したのかい?』と尋ねられます。多くの方に関心を抱いていただけてうれしいですね。あと、洗車をしても、ボロボロなのでむなしくなることがデメリットといえるかもしれません」

 ちなみに、警察から職務質問をされたことは「“まだ”ない」というが、PR目的でつくったというこのプリウス、効果は抜群のようだ。見た人々がプリントだと気づけば、の話だが……。

 サビプリウスの総工費は約70万円。サビ加工はオーダーメードの一点もので、プリウス以外の車種にも施すことが可能だという。確かにまじまじと眺めていると「滅びの美」とも似通った渋さと格好良さがあるような気がしてくる。サビ加工、アリかもしれない。(ライター・小神野真弘)