注目したいのは、セルジ・ロベルトだ。右サイドバックだが、遊軍的に右エリアをカバーし、積極的に攻撃に参加する。メッシとの呼吸が合い、人を使うのも、使われるのもうまい。彼がボールをつなげ、高い位置で触り、持てるようなら――。バルサは奇跡を起こせているかもしれない。

「パリでのファーストレグは、私が3年間率いる中で最悪の試合になった。どんな試合よりも、あの試合のことは見返したよ。いつもなら起きないようなことが立て続けに起きて……今は(セカンドレグに向けて)、カンプ・ノウが我々をいつも以上にもり立ててくれるように戦いに挑むだけ。たとえリスクを冒しても。最後の最後まで自分たちを信じて戦うよ」

 乾坤一擲(けんこんいってき)に挑むルイス・エンリケ監督の闘争表明である。

小宮良之
1972年生まれ。スポーツライター。01~06年までバルセロナを拠点に活動、帰国後は戦うアスリートの実像に迫る。代表作に「導かれし者」(角川文庫)、「アンチ・ドロップアウト」3部作(集英社)、「おれは最後に笑う」(東邦出版)など。3月下旬に「選ばれし者への挑戦状」(東邦出版)を刊行予定