――いまのところ「性欲」と直結させる傾向が強いように見えます。

山本「性暴力もDVも、一方がもう一方を支配して傷つける行為であって、性欲の問題ではありませんよね。男女の格差が大きく性別役割分担意識が強い社会ほど性暴力が発生しやすい、という事実からもそれは明らかです。そうした社会では、女性は男性の性的対象としての役割を果たすべき存在だから、性被害があっても仕方がないと思われます。むしろ、性的な対象として振る舞っている女性が悪いとされるでしょうね」

 日本でも、性被害に遭った女性の自己責任が問われることが多く、性犯罪予防は女性の自衛によってなされるものという意識がいまだ強い。

――こうして性暴力の実態について力強く発信されている山本さんが、もし13歳のときの自分、あるいは今、性暴力を受けている子どもたちに話しかけらかれるとしたら、どんな言葉を届けたいですか?

山本「信頼できる大人に話して、と。その人が適切に対応してくれなかったら、別の人に相談してほしい。ある人がいうには、大人の3人に1人は信頼できる人物だそうです。誰かに話すのはとても大変ですが、あなたの話を聞いてくれる人が必ずいます、あきらめないでと伝えたいです」

 同書の冒頭では、2014年に米国ホワイトハウスが公開した「1 is too many」――性暴力は1件でもあれば多すぎる、というメッセージ動画が紹介されている。オバマ大統領(当時)をはじめ俳優やスポーツ選手、起業家の男性が世界に向けてそう発信する。こうして性暴力に対して強く「NO!」を尽きつける社会はとても心強い。だが個人にもできることはある、それは3人に1人の、信頼できる大人になることにほかならない。山本さんの一冊は、そんなことを教えてくれる。(文・構成/三浦ゆえ)