新戦力は何も移籍組ばかりではない。開幕戦で早速、Jデビューを飾ったルーキーもいる。興味深いのは広島のMF森島司、新潟のMF原輝綺、仙台のDF永戸勝也だ。2列目の森島は相手ゴールへ迫る積極性が際立ち、ボランチの原はハードワーク、左アウトサイドの永戸は推進力と左足から放つクセ球で存在をアピール。いずれも、初陣とは思えぬ堂々たるプレーぶりだった。
では、鳴り物入りで加入した実績十分の大駒はどうだったか。磐田の中村俊輔やFC東京の大久保嘉人は期待値が大きい分、評価のハードルも高い。開幕戦で「らしさ」を見せたものの、額面どおりの働きを演じるのは、これからだろう。周囲との連動性が高まるにつれ、間違いなくパフォーマンスの質も上がってくるはずだ。少なくとも、それだけの兆し、存在感は見て取れた。
大久保同様、FC東京に加わったFWの永井謙佑、MFの高萩洋次郎、DFの太田宏介も本領発揮はこれから。特に楽しみな存在が、ボランチに入った高萩だ。開幕戦では高い守備意識をもって泥臭い仕事も厭わなかった。天才肌の司令塔だけに新鮮味は十分。次節以降、持ち前の創造的なパスが増えれば、大久保のゴールラッシュを促すことにもなるだろう。
心臓を担うレオ・シルバ、得点源となるペドロ・ジュニオールの鹿島勢は5連戦の最中であり、ゼロックス杯ほどのインパクトはなかったが、能力の高さは実証済みだ。前評判の高かった広島のフェリペ・シウバは新潟に対策を講じられ、見せ場は少なかったものの、次節以降の「変わり身」に期待したいところだ。
気がかりな大駒と言えば、川崎Fへ加入した家長昭博か。周囲とかみ合わず、後半早々にベンチへ下がった。実力は申し分ないものの、本職ではないFWを任された起用法を含め、チームの重要な歯車として機能するには、しばらく時間がかかるかもしれない。
ともかく、シーズンは長丁場。新戦力の「第一印象」がポジティブであれ、ネガティブであれ、最終評価はいくらでも変わりうる。この先、予定調和の筋書きに風穴を開ける新顔の台頭に、大いに期待したい。(文=サッカージャーナリスト・北條聡)