なお、このなかには4月以降にゼニト・サンクトペテルブルクから上海上港に加入したフッキや、サウザンプトンから山東魯能に加入したグラツィアーノ・ペッレが含まれていないが、英『デイリー・メール』はフッキの年俸がリオネル・メッシと同額の約23億4000万円、ペッレはズラタン・イブラヒモヴィッチと同額の約18億7000万円と伝えている。

 中国のクラブが爆買いに天文学的な額を投じることができるのは、大企業がオーナーになっているからであり、そのバックには2050年までのW杯優勝を目指す中国政府がついているからだ。企業はサッカーで利益を得ることよりも、政府(習近平国家主席)の点数を稼ごうとトッププレーヤーの獲得に躍起になっている。

 かつてはニコラ・アネルカやディディエ・ドログバが給与未払いを理由に上海申花を退団し、ルーカス・バリオスも同様の問題で揉め、1年で広州恒大を退団した。また、結果が出なければ簡単に指揮官のクビを切ることから、中国移籍はリスクが大きいとも言われてきた。しかし、そんなマイナスの評判も中国サッカーの拡大を止めることはなく、広州恒大がブラジル代表MFパウリーニョと2020年まで契約を延長するなど、最近は選手の定着率も悪くない。昨季スーパーリーグ得点王は2015年にクルゼイロから広州恒大に加入したリカルド・グラールで19得点と、優勝に大貢献。ベジクタシュから上海申花に加入したデンバ・バは14得点で2位タイ。エウケソン、テイシェイラも11得点でトップ10入りを果たし、それぞれ活躍している。

 欧州では大多数の人間が「中国はキャリアの終盤になってから行くところ」と考え、どの監督も自チームの主力が出ていくことはないと安心している。しかし、アーセナル(イングランド)指揮官のアルセーヌ・ヴェンゲルは、この流れはイングランドにも悪影響を及ぼすと警鐘を鳴らす。ヴェンゲルは「工場で働く人間ならノーとは言えまい。しかしサッカー選手なら言えるだろう。私だって金だけを考えていたら今ここにはいない。トップレベルのリーグで戦うことこそが最大の誇りだと信じている」と、金で決めるな、ノーと言えと選手に訴える。

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