実際、マイナス金利導入決定前と実施以降のメガバンクの預金金利を比較すると、導入決定の1月29日以前の1年物定期預金の金利は0.03%、2月の実施以降は0.01%です。3分の1になったのは確かですが、100万円を預けて300円もらえていた利息が100円になったと考えると、冷静になれるのではないでしょうか。

 むしろ「マイナス金利だから大変だ、投資しなければ」と、預金のわずかな減額分をカバーするために、よく調べも考えもせずに株式や投資信託などの金融商品を買ってしまうことのほうが問題です。株式や投資信託には値下がりリスクなどもあります。

 投資信託を例にすると、購入時の手数料が無料の商品も一部ありますが、銀行や証券会社の窓口で仮に100万円分を購入すると、2万~3万円程度の手数料がかかる商品が多いでしょう。保有中は信託報酬も差し引かれます。信託報酬は安いもので年率0.2%程度ですが、100万円分なら年間2000円かかることになります。利息が200円減った分をほかで挽回しようという理由だけで、購入時に2万円の手数料を支払い、毎年2000円も運用コストが引かれる金融商品を買ったり、値下がりリスクをとったりするのは、賢明とはいえないでしょう。

 投資がダメというのではなく、マイナス金利という言葉に刺激されて投資するのは合理的ではないということです。私が証券会社に38年間勤めてたどりついた「お金の増やし方」4カ条にも示しましたが、「資産運用」は大事なポイントです。資産を長期運用する一つの手段として、投資をその一部に組み入れるのは有効な方法です。その場合、価格が変動する投資型商品と、元本が保証されている個人向け国債や預貯金の割合をどうするかを考える必要があります。

■投資をするなら、自分のリスク許容度を考えよう

 これは個人それぞれのリスク許容度によって異なります。リスク許容度を決める二大要素は「保有する金融資産の総額」と「リスク耐性」です。金融資産が1億円の人と100万円の人では、1億円保有の人のほうがリスク許容度は高いといえます。ところが、全資産100万円を投資して10万円損しても「また取り戻せばいい」と平気な人もいれば、10億円保有しているのに投資で10万円でも損をすると「夜寝られない」という人も実際にいます。リスク耐性が弱い人は、無理をして投資するべきではないでしょう。投資のことばかり気になり、生活や仕事、家族関係などに悪影響が出ては元も子もありません。

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