茨城県の大洗町は「ガールズ&パンツァー」の舞台で、アニメを活用した街おこしに成功している
茨城県の大洗町は「ガールズ&パンツァー」の舞台で、アニメを活用した街おこしに成功している

 「聖地巡礼」が2016年の新語・流行語大賞ベスト10に選ばれた。これは都内や岐阜県飛騨市を舞台にした劇場アニメ「君の名は。」の大ヒットを受けたものと考えられるが、アニメやマンガの舞台を旅する「聖地巡礼」そのものは10年以上前からあった動きだ。

 以前は、どこが舞台となっているか、制作側が明らかにしておらず、視聴者がネットの情報を頼りに「聖地」を探し出して「巡礼」していた。だが、そんな手間は今や昔。現在ではこんな下調べをしなくても、現地の観光案内所等で「聖地巡礼マップ」が配布されていることも珍しくない。「聖地巡礼」は今や観光としてすっかり板についた。

 それは、スマートフォンアプリも例外ではない。現在、位置がわかるスマホの利点を活かし、画面上でどこに向かえばいいか教えてくれる「聖地巡礼アプリ」も複数出ている。中には「ポケモンGO」にも使われたAR(拡張現実)技術を活用し、アニメ製作側と地域と連携して地域振興に結びつけているものもある。ソニー企業株式会社が開発する「舞台めぐり」だ。

 「舞台めぐり」は13年4月にAndroidアプリ、同年8月にiOSアプリとして無料で公開された。登録作品の数は58作品(16年12月6日時点)に及ぶ。スマホの地図機能と連携し、自分の現在位置と照らし合わせ、作品ごとに舞台がどこにあるかを作中のシーン別にわかりやすく教えてくれる。しかも、単に場所を教えてくれるだけでなく、作品中で実際に使われたカット付きで紹介されるようになっている。さらに、それぞれの舞台では、実際の風景にキャラクターの絵を重ねて撮影もできる。この時自分撮りをすれば、キャラクターとの2ショットも可能だ。ここにAR(拡張現実)技術が使われている。さらに一部の作品では、「舞台めぐり」オリジナルのキャラクターボイスが聴けることもある。

 これまで「舞台めぐり」は15万回以上ダウンロードされ、このうち約5万人が「聖地」を実際に訪れているというが、この背後には、製作側と地域との橋渡しが欠かせない。「舞台めぐり」生みの親の安彦剛志さんはこう話す。

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