大隅良典さん(左)と池上彰さん/(c)朝日新聞社(大隅さん)
大隅良典さん(左)と池上彰さん/(c)朝日新聞社(大隅さん)

 2016年のノーベル医学・生理学賞を受賞した大隅良典さん。実は、9月に出版された本『池上彰が聞いてわかった生命のしくみ――東工大で生命科学を学ぶ』(東京工業大学の生物学教授・岩﨑博史さんと田口英樹さんの共著)の中で、池上彰さんと対談しています。

 大隅先生から直接、オートファジーや老化のしくみについて学んだ池上さんが、今回の受賞を受けて、大隅さんの研究が私たちに教えてくれること、そして大隅さんの生命科学に対する思いを記します。

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 この本の中で話を聞いている東京工業大学の栄誉教授である大隅良典氏が2016年度のノーベル医学・生理学賞を受賞しました。本の中で「オートファジーの研究でノーベル賞有力候補である」と紹介していただけに、いわば“予言”が当たったようなものですね。

 この本は、東京工業大学で「生命科学」が必修になったのに合わせて、東工大の先生たちから生命科学の大切さを学ぼうと企画されました。

 私たちが生きていく上で極めて大切な存在がタンパク質です。私たちは、外部からタンパク質を吸収しないと生きていけません。

 ところが、船が難破して漂流したときなど、水だけである程度生きていくことができます。それはなぜか。私たちの体内にあるタンパク質を分解して組み立て直す仕組みがあるからなのです。そんなタンパク質の秘密に迫ったのが、大隅先生の研究です。

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