「今の作家だと、浦沢直樹さんが手塚さんの一番の後継者っていう感じがするね。彼も構成ありきで描く人でしょう。コマ割りなんかを見ていると、うまいなと思う」
一方のちばてつやは「キャラクターを前面に出す」人。
「ちばさんは、キャラクターの表情をものすごく豊かに描いている。ストーリーより、とにかくキャラクターが描きたいのだと思う。『のたり松太郎』なんて特にストーリーはないでしょう(笑)。だけど読者も『今あいつがどうしてるんだろう』って気になるし、見たくなる」
「ちばさんは、原稿がすごく遅い。キャラクターの感情に沿って描いていくから、自分が感情移入できないと筆が進まないの。手塚さんはそうじゃないから原稿が早いんだよ。……言っとくけど、これ、僕の主観ですからね(笑)」
ちばてつやの後継者としては『はじめの一歩』の森川ジョージの名が挙がった。
「やっぱりキャラクターを描く人だと思う。ものすごくうまく、ちばさんから盗んでいる(笑)。(主人公の)一歩を、ジグザグに進んでいくように作ってある。あれだけ強かったら、一直線にチャンピオンになってもおかしくない。だけど必ず要所要所で挫折させているでしょう」
「でも、そういうキャラだけだと辛気臭いし、作家自身も煮詰まるから、一方で鷹村みたいな明るいキャラを描いてうまく気分転換している。キャラクター群像、脇の置き方がうまいよね」
(取材・構成/門倉紫麻)
※『手塚治虫文化賞20周年記念MOOK マンガのDNA―マンガの神様の意思を継ぐ者たち―』、鳥嶋和彦スペシャルインタビューより一部抜粋