反対する幹部を説得し、「試作だけでもしてみよう」とチャレンジした。しょうゆの風味とコショウのスパイシーなフレーバーを加え、コーラのような濃い色のサイダーが完成。すると、試飲した社長から「意外とイケる」との声が。トップのOKが出れば話は早い。半年で商品化された。

 キャッチコピーは「黒くてからいサイダー。でも“やみつき”になる味(たぶん)。」とのこと。なるほど。見た目はラーメンのスープに似せてある。しかし、「富山ブラックサイダーは、香り付けにしょうゆの香料は使っていますが、実際にしょうゆそのものは使用しておらず、塩分は全く入れていません」(担当者)とのこと。なのに飲んだ人からは「しょっぱい」「塩からい」など声が聞かれるそう。「富山ブラックは、しょっぱいラーメン」という先入観があるからだろう。

 「こちらもどうぞ」と勧められたのが「金沢カレーコーラ」。開封したとたん、ツーンと香辛料のにおいが鼻をつく。「カレーを飲み物にしました(笑)」とのキャッチコピーに、「悪乗りしすぎでは?」と、思わず笑ってしまった。

 石川県内では「金沢カレー」がB級グルメとして人気を集めている。濃厚なルーとトッピングの大きなとんかつ、その上にソースをかけ、千切りキャベツを添えて食べるのが特徴である。カレーコーラは、カレーのコクとソースのフレーバーをコーラで表現した新商品だ。16年4月に発売された。 

 昔懐かしいラムネのイメージから、大きくかけ離れた富山ブラックサイダーと金沢カレーコーラだが、いずれもヒット商品となった。5代目となる現社長、翠田(みすた)章男氏の経営者としてのポリシーは「いかなるときも“打つ手は無限”」である。担当者によると、すでに次の「打つ手」を考えているらしい。次はどんなB級グルメが炭酸飲料になるのか? 新商品開発の可能性は無限だろう。(ライター・若林朋子)