濃い色とコショウの味が特徴の「富山ブラックサイダー」(トンボ飲料提供)
濃い色とコショウの味が特徴の「富山ブラックサイダー」(トンボ飲料提供)
コクとソースの風味を生かした「金沢カレーコーラ」(トンボ飲料提供)
コクとソースの風味を生かした「金沢カレーコーラ」(トンボ飲料提供)

 「富山ブラックラーメン」をご存じだろうか? 黒いしょうゆ味のスープと黒コショウが味の特徴である。「一度食べたらやみつきになるうまさ」をイメージした炭酸飲料があるらしい。その名も「富山ブラックサイダー」。ご当地ラーメンに便乗した“罰ゲーム飲料”的な商品ではなく、好評を得ているとか。どんな味がするのだろう?

 見た目はコーラのようだ。グラスに注ぐと、黒ビールに似た濃厚な泡が湧き上がる。口当たりはまろやかで、しょうゆの風味を感じるが、しょっぱくはない。のど越しはコーラに似ているものの、より強い刺激がある。飲み込んだ後も、唇に香辛料のピリピリ感が残った。最も似ているのはジンジャーエールか。決してまずくない。というか、まったく新しい味のおいしさなのだ。

 開発・販売を手掛けるのは富山市に本社があるトンボ飲料。創業120年で、現存する国内最古のラムネメーカーである。ガラスびんを傾けるとビー玉が涼しげな音を立てる懐かしい形のびんに入ったラムネや、シャンパン風のノンアルコール炭酸飲料「シャンメリー」が主力商品だという。富山ブラックサイダーは、2000年半ばから始まった“ご当地サイダー・ブーム”に合わせて、12年4月に発売された。「5万本を超えれば上々」という同社の予測に反して初年度から13万本を売り上げ、その後も好調を維持している。

「ラーメンをサイダーにするとは、画期的なアイデア!」と驚き、担当者に開発の過程を聞いてみると、最初からうまくいったわけではない。11年に発売した柑橘系の「ラボンサイダー」に続けと、地元産の果物をイメージした商品開発で試行錯誤を重ねたが、梨やゆずなどで失敗が続いた。味のインパクトに欠けたり、安定して材料を確保できなかったり……。そこで挙がったのが富山ブラックラーメン。20代後半の営業担当者による「煮詰まった末の苦し紛れの提案」(担当者)だった。

「当初、社内では大反対でした。社長をはじめ幹部から“絶対ダメ”と言われていました。うちは飲料メーカーです。ひと口飲んで“まずい”と吐き出されるようなものを売るわけにはいきません。また、話題性だけでは売れませんから……」(担当者)

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