今回の彼女たち新世代の活躍の陰には、吉田や伊調の存在が大きな影響を与えている。特に吉田は、大学の後輩でもある彼女たちに、折に触れ五輪で実際に体験したことを話し、それとなく雰囲気を伝え続けた。ベテランではあるが、ケガの合間にレスリングをするような満身創痍の状態である伊調にも気を配り、彼女たちが試合に集中しやすい環境を整えていった。

「沙保里さんからは、五輪での様子をよく聞かせてもらいました」(登坂)
「選手村で、会ってみたかった卓球の石川佳純選手を沙保里さんに紹介してもらって感激です」(川井)
「先輩たちを見て、最後まで諦めないことが大事だと思いました」(土性)

 その甲斐あって吉田の後輩たちは次々と金メダルを手にした。残念ながら、自分自身は相手のペースに巻き込まれたまま決勝戦を終えてしまったが、今回の女子代表のメダルはすべて、吉田を中心とした「チーム」で得たものだといえるだろう。

 2020年の東京五輪でも、この新世代の選手たちの活躍に期待が持てる。五輪の女子レスリング第一世代である吉田と伊調は、その去就を明らかにしていないが、現役を続けるにせよ、退くにせよ、道を切り開いた彼女たちの後輩たちが活躍することは間違いなさそうだ。(文・横森綾)