「レース前の緊張はすごかったが、本番では自分のレースに集中してスタートを切れた」

 そう言った山縣は、日本選手権後に海外遠征を行った他の2人とは違い、国内でじっくり練習をして仕上げてきたのが今日の走りにつながった。ロンドン五輪にも出場した彼の大舞台へ向かう経験値の大きさが、冷静な準備と本番での走りを作り上げたといえる。

 だがその二人とは逆に、“暗”のくじをクジを引いてしまったのが桐生だった。第7組はウサイン・ボルト(ジャマイカ)と同走で9秒台は他にも3人いる厳しい組だったが、桐生は最初から力みの見える走りになってしまって伸びず。10秒23で4位という記録に止まり、タイムで予選通過となるプラス8でも拾われないまま予選敗退という結果になった。

「今日までの1年間はいろいろあったが、その集大成がこの結果かなと思うので、自分はまだまだなんだという感じです」

 こう話す桐生は今年3月には、アメリカで開催された世界室内に出場したあと、昨年の世界選手権で3位になった同い年のトレイボン・ブルメルと一緒に練習する機会も得た。さらに日本選手権後の7月にもヨーロッパ遠征を実行した。だがその中で走りがしっかりまとまりきらなかったという経過が、このレースで出てしまったといえる。

 ケンブリッジと山縣が出場する男子100m準決勝は、日本時間で15日の午前9時から行われる。(文・折山淑美)