ヴェンゲル監督としては、攻撃サッカーを志向するスペイン人のロベルト・マルティネスが監督を務めていたことから、宮市をウィガンに預けたように思うが、指揮官の思惑とレンタル先のそれが必ずしも合致しないことが浮き彫りになった。

 今夏に労働ビザを取得できても、おそらく浅野はレンタルの武者修行に出されるだろう。取得できれば、英国内のクラブへレンタルに出され、できなければフランスやオランダなどの国外クラブに向かう公算が大きい。

 そこで、何を得て、何を掴むか。イングランドのクラブに限って言えば、1軍所属の選手に監督やコーチが手取り足取り指導してくれるケースは極めて稀である。自分のストロングポイントを熟知し、練習の中で最大限に自分をアピールする。そして、試合で結果を出し、定位置をこの手で掴まなければならない。当たり前のことのように聞こえるかもしれないが、「モノにならない」と判断されれば、すぐに代わりの選手を手っ取り早く補強してくるのが、豊富な資金力を持つプレミアリーグだ。競争力と選手の競争意識は、欧州でもトップクラスに入るだろう。

 もちろん、こうした厳しい競争を勝ち抜けば、得られるモノは大きい。そこで一歩、抜け出せるか──。21歳の日本代表FWが選んだ挑戦に期待したい。

(文・田嶋コウスケ)