まず目についたのは球速。最速158キロをマークし、フォーシームはほとんどが150キロ台と、この点では故障の影響を感じさせなかった。この日に許した2安打はツーシームとスライダーだったがいずれも甘い球ではなく、打ったバッターが見事と言いたくなるいいボールだった。ダルビッシュもリゾに浴びた逆転打については「ボールは思ったところに投げられた。脱帽するしかない」と通訳を介して相手をたたえていた。5回途中での降板というのは先発投手として役目を全うできていないが、これは球数制限によるもの。まずは上限までしっかり投げ切ったことを評価すべきだろう。

 ときおり指に引っかかったように制球を乱すシーンがあったのは、復帰戦特有の力みだろうか。4四球はあまりほめられたものではないが、それでもブライアントを2打席連続三振に抑えたように、強打者との対戦やピンチの場面ではしっかりギアを上げていた。ダルビッシュ本人も「いいボールを投げられた」と語り、痛みなどもなかったと振り返っている。この点は大きな収穫だった。

 今後に向けた最大の課題は、やはり制球だろうか。この日の9奪三振が示すように、ダルビッシュは打たせて取るタイプではないだけに、意識して球数を抑えるには四球を減らしていくしかない。もともとトミー・ジョン手術明けのシーズンとあって、バニスター監督は1試合で100球以上投げる機会を今季はダルビッシュに与えないだろう。この条件で白星の確率を高めるには無駄なボール球を極力減らし、最低でも5イニングを投げられるようにするしかない。

 レンジャーズはコルビー・ルイス、デレク・ホランドの両先発投手が故障者リスト入り。ア・リーグ西地区で首位を走っているとはいえ、この日の敗戦で今季最長タイの4連敗となり、ここ11戦で9敗と失速傾向にある。8月1日のトレード期限までに補強も考えられるが、ダルビッシュが先発ローテーションを守って勝利を重ねることが今後はいっそう重要になる。球数や登板間隔も含め、レンジャーズ首脳陣のダルビッシュ起用法にも今後は注目していきたい。