ソフトバンク・城所龍磨(中央)=2016年2月1日c)朝日新聞社
ソフトバンク・城所龍磨(中央)=2016年2月1日c)朝日新聞社

 プロ野球のセ・パ交流戦が、順当なら今日20日に終了する。勝ち越しリーグ(パ・リーグ)の勝率1位球団であるソフトバンクから、MVPが1人選出される予定だ。有力候補と目されるのが、プロ13年目のベテラン城所龍磨外野手(30)だ。交流戦1位の打率4割1分5厘、同5位タイの5本塁打、同10位タイの12打点、同3位の6盗塁(盗塁死0)。対抗馬として打率3割1分8厘(17位)、5本塁打(5位タイ)、20打点(2位)、0盗塁の内川聖一外野手(33)もいるが、ここでは城所に焦点を絞って話を進めたい。

 以前、原口文仁(阪神)を例に「苦労人には味がある」と書いたが、城所こそ華やかなプロ野球の世界では苦労人中の苦労人だ。2003年に高校生野手としては高評価のドラフト2巡目で中京高(岐阜)から入団したものの、昨年までシーズン最多安打は16本(06年)。出場は代走、守備固めが中心だった。

 昨年までの12年間で、出場はわずか589試合(1シーズン平均49試合)。30歳シーズンとなった昨年にいたっては、2月に左手を骨折し、ようやく治って初出場した8月の試合で左肩を脱臼。出場は1試合にとどまった。端的に表現すると「自由契約(クビ)になってもおかしくない成績」の選手だった。打席が12しかなかった14年、1軍に居続けた9月に「キドコロ待機中」のタオルが発売。15年の春季キャンプにそのTシャツをイチロー(マーリンズ)が着て登場したが、一部の野球ファンのみが知っている存在だった。

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