「刀身そのものの美術性に着目してください。まずは刃文(はもん)の形をじっくりと見てほしい。そして例えば松の幹のような“松皮肌”など地がねの模様などを見れば、折返し鍛錬の跡が分かります。江戸時代の前までは作刀された地域ごとにそれぞれ独自の特色を有しています」(山さん)

 見方が分かると、がぜん刀を鑑賞することが楽しくなってくる。個人的に、最も気に入ったのは、鑑賞室の中央にあるケースに展示された薩摩の拵(こしらえ)だ。黒色で統一され、鞘の部分には島津家の家紋が入り、全体的にコンパクトなつくりで、デザイン性が高い。「よく見てください。鍔が小さいでしょう? 薩摩示現流の影響を受けていると考えられます」と山さん。美しい刀はすべて機能性が高いということだろう。

 刀の形にはそれぞれ、さまざまな意味がある。「公家文化なのか、武家文化なのか? 当時の戦術は? など時代背景によって切っ先が大きくなったり小さくなったりするなど、刀の形は変わります」と山さん。刀剣の鑑賞は、奥が深い。

 2階の鑑賞室は黒を基調とした内装で、静か。静謐な雰囲気が漂っている。吸い寄せられるようにして刀に見入った後、「少しは鑑賞眼を養うことができたかも……」と思うにわかファンの一人である。(文・若林朋子)