重要文化財の刀「虎入道」(森記念秋水美術館提供)
重要文化財の刀「虎入道」(森記念秋水美術館提供)
「虎入道」の銘が刻まれている(森記念秋水美術館提供)
「虎入道」の銘が刻まれている(森記念秋水美術館提供)
名刀を集めた2階の鑑賞室
名刀を集めた2階の鑑賞室

 富山市中心部に6月11日、個人収集家の日本刀コレクションをはじめ、貴重な美術品を展示する森記念秋水美術館がオープンする。刀剣ブームに乗った“にわかファン”としては、付け焼き刃ではなく、名刀の真価が分かる鑑賞眼を身につけたいところ。開館に先立ち同美術館を訪ね、専門家から日本刀の見方について聞いてみた。

 同美術館学芸課長の山誠二郎さんによると、館名にある「秋水」とは、曇りのない研ぎ澄まされた日本刀を意味する言葉とのこと。同館では刀剣200振、刀装具・甲冑(かっちゅう)、兜(かぶと)など数十点を所蔵している。コレクションは、地元の医薬品メーカー・リードケミカルの社長、森政雄さんが長年にわたって収集してきたものだ。

 同館では、2階の鑑賞室で重要文化財5点や、重要美術品10点を含む日本刀・刀装具・武具などのコレクションを、3カ月ごとに年4回入れ替えて展示する。また、3階の鑑賞室では特別展を開催、開館記念として「細川護熙の美と永青文庫の至宝」が行われている。1階は富山県ゆかりの作家の作品などを展示するギャラリーだ。

 収蔵品の中で最も注目を集めそうなのは重要文化財で、「住東叡山忍岡辺長曾祢虎入道 寛文拾一年二月吉祥日」の銘がある刀ではないだろうか。甲冑師・刀工だった長曾祢興里虎徹(ながそねおきさとこてつ)の作である。

 新選組局長・近藤勇の愛刀だったともいわれている「虎徹」は、「乕徹」、「虎入道」など銘が変わり、後年につくられたものほど優れていると評価される。「虎入道」は興里が円熟期のころの作である。「美しく、よく切れると言われています。美と機能と力強さを併せ持つのが虎徹の特徴です」(山さん)とのこと。

 美と機能という、二つのポイントから日本刀を鑑賞するポイントを教えてもらった。初心者はまず、鞘(さや)や鍔(つば)などの装飾に目を奪われがちである。大名が将軍家に献上した拵(こしらえ)などは、葵の御紋がちりばめられていて豪奢である。しかし、刀本来の美しさは刃にあるらしい。

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