雇用も不安定で、結婚もしていない「持たざるきょうだい」が増えているというわけだ。

 ただ、この問題は、「親」という防波堤が現在、かろうじて深刻化を防いでいるとも言える。親は、右肩上がりの給料や手厚い年金に守られた世代。ニートやひきこもりなどの子どもが大人になっても、親が支えているケースは多い。だが、その防波堤がなくなったとしたら――。

 支えるのはきょうだいだろう。だが、同世代のきょうだいもまた、不安定な雇用にあえぎ、自分自身の生活を支えるのがやっとのケースも多いのだ。

 著者で社会学者の平山亮さんは、現在の40、50代を「きょうだい不安世代」と名づけた。雇用が不安定なうえ、「家族は支え合うべきものだ」という戦後の親の価値観を刷り込まれた世代。「1億総中流」は崩れたのに、家族やきょうだいは平等であるという幻想を抱かされている。それなのに現実には、深刻な「きょうだい格差」も存在する。

 これらの問題を解決するには、問題を「家族という檻に閉じ込めないこと」と平山さんは本書で指摘している。

「老いや貧困といった問題の解決が、過重に家族に期待されている社会の在り方にこそ問題がある。そのなかで、親きょうだいが骨肉相食む状態となり、やがては家族を丸ごと崩壊させる。頼りにできる先が、家族以外にも社会の中にいくつもあり、自由に選べること。そうならなくては、世代間(親・子)、世代内(きょうだい)に起こる家族の軋轢を根本的に取り除くことは難しいでしょう」