現在の“推し”メニューは「キンダイ」のお造り(税抜800円)。大学の略称と同じ名前の魚は食感が良く、フグの刺し身のように、薄くスライスした造りにもみじおろしをつけて食べるのがお勧めだという。大量生産できないため、通常メニューではなくディナーのみでの提供だが、売り切れることも多いそうだ。来年も出すかどうかは現時点では未定で、気になる人は今のうちに食べておいたほうが良いかもしれない。

 他には「近大マグロと選抜鮮魚のお造り盛り」(各3貫税抜2700円)も人気で、筆者も食べてみた。近大マグロを赤身と中トロ、大トロのうち2種、その他にお勧めの3種類の魚が味わえる一品だ。マグロ以外の魚は仕入れの状況によって変わり、この日はブリヒラ、マダイ、シマアジだった。

 北陸の日本海育ちゆえ魚は食べ慣れているが、歯ごたえや甘み、舌触りなど、これまで食べた天然ものにそん色なかった。特に「ブリヒラ」は初めて食べたが、脂がのっていてかむほどに甘みが感じられた。お造りには魚の“卒業証書”もついており、持ち帰る客もいるという。

 リピーターも多いというが、今後はどういった店舗を目指すのか。羽島さんは「養殖魚なら乱獲せずともおいしい魚が食べられ、資源の確保にもつながる。お客さまのアンケート結果などを分析し、ウナギ味のナマズのように、養殖魚に興味を持ってもらえるメニューを提供したい」と意気込む。

“マグロ大学”の大いなる野望が詰まった養殖魚の専門料理店。マグロやサンマなどの漁獲規制が国際的に議論される中、安定生産が見込める養殖魚の重要性は増しているのではないだろうか。日本人の既成概念をくつがえせるのか、今後の展開に注目したい。

(ライター・南文枝)