市場を形成する市場参加者は、提示した価格に対して取引が成立した場合には、成立した取引の持高をリスクとして保持するのか、それとも市場取引で反対売買をおこなって持高を解消するのかを、その場で決定します。この持高(ポジションと市場では言います)をどうしようか、と上司に逐一うかがうことはあり得ません。確認するトレーダーやシステムがあれば、即刻首、または廃棄ですね。


 
 つまりこの市場では、取引する双方が常にお互いBIDとASKの双方の値段を提示し合いながら、連続して相対取引を実行しているのです。価格が横並びとはならないのは、各金融機関の背後にある顧客の興味や、為替取引部門の方針等で微妙に差が出てきます。
 
 普段は上記のような要因で価格が決定し、変動していくのですが、注目されている経済指標の発表で予想外の結果が出たり、先日の中国元の3日連続切り下げや、いわゆる「黒田バズーカ」のような金融政策の実施など突発的なイベントが発生した場合、取引参加者は売るか買うかの判断を一時保留します。「市場」というのは、常になんらかの価格が提示されているように思いますが、ここでは価格を提示しているのは金融機関であり、参加している投資家です。ポジションリスクがとれない環境になった場合(反対する売買相手がいないと判断できる場合)、価格を「提示する」こと自体がリスクになります。対応としては、BID/ASKの価格差(スプレッド)を広げるか、もしくは価格提示自体をストップさせます。今や、電子取引が主流になって便利にはなっていますが、急激なリスクがある場合には価格自体が消滅する事態もあり得るということです。
  
 少し専門的な例になりますが、A銀行が120.20-22、B銀行が 120.40-42と提示している場合、どちらが正しいという判断を即時に出せるでしょうか?さらにC銀行が120.37-38となっていたら…。無難な方法としては120.20-42の価格提示になりますが、当然、このような場合には、前述の各銀行はリスク回避として、120.20-50と広げていき、その後もしばらくは30-50ポイントでの価格提示が続くことでしょう。 

 今年に1月にあった「スイスフランショック」では、事態はより悪く、一時4500-5000ポイント(円で考えれば45-50円相当数の価格差)になり、通常の価格提示は不可能、銀行間でも価格表示が停止しました。 

 このように価格が決まって行きますので、今見ている価格は、実は常に「イリュージョン」。金融市場は「WIN WIN」よりは「Give and Take」です。持ちつ持たれつ。変化するのが当たり前と思っておきましょう。(FXストラテジスト 宗人)