次は、箱庭を使ったカウンセリング。先ほどのものは無料でできるが、こちらは30分3000円の有料。棚に置いてある、いろいろなフィギュアや模型などのアイテムを選ぶ。そして、砂の入った箱に入れる。アイテム数に制限はなく、置き方も自由。底が水色になっているので、砂をよけて形をつくり、海や川にすることもできる。

 砂は本物そっくりだが、触るとふわっとしていて気持ちがいい。箱庭用につくられた人工のものだそうだ。「五感に働きかける効果もあります」(下山さん)。

 左奥にちょっとした丘をつくり、家を置いた。ところどころに木々とビー玉を配置し、右奥にアルパカを、右手前にリスを置く。川をつくり、真ん中に橋を渡した。砂は雪に見立てている。

 箱庭が完成すると、カウンセラーが私にどんどん質問を繰り出す。

 この家に住んでいる人は? 羊はいつからここに来ているのか? リスはここにどんな目的できているのか? キラキラするビー玉はなぜここにあるのか? どんぐりは何なのか? など。

 その後も、いろいろと先生から聞かれ、その都度答えていくと、どうやらこの家は私の実家で帰るとホッとする場所であるらしい。一方、川の手前側の世界について聞かれ、「薪など生活に必要なものが出たときに橋を渡っていくところです。怖い場所でオオカミ的なものや、おばけが出たりもするんです」と答えた私。どうやらこちらは東京らしい。一瞬、上司Kや先輩Rの顔が浮かんだ。

 先生は断定することがない。質問することによって、相手の言葉を引き出し、言った本人が「そうだったのか!」「そうなのかも」と気づくように促す。「自分の中にない言葉は出てこないんですよね」と下山さん。

 カウンセリングを受けて物足りないと感じる人は、答えが聞きたい人かもしれない。カウンセラーは何かを診断してくれるわけではなく、あくまでもその人が今どんなことを考え、将来をどんなふうに思っているかを聞き出すのが仕事なのだということがわかった。

 終わってみたら、心にあったモヤモヤが軽くなった感じがした。結果的に自分のことを話していたわけで、こんなにたくさん他人に自分のことを説明したことなどなかったなと思った。

 心理カウンセリングで、心のデトックスができそう。木の絵も、箱庭の中身もそのときどきによって、大きく変化するのが当然だという。心のモヤモヤを溜めてしまいがちな現代人にとって、友人や家族でもない人に自分のことを聞いてもらう機会は、人生を楽に生きるために必要な時間なのかもしれない。

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