『グーグーだって猫である』に見る小泉今日子と宮沢りえの違い

助川幸逸郎dot.#小泉今日子になる方法

連続ドラマW グーグーだって猫である DVD BOX
出演:宮沢りえ、長塚圭史/監督:犬童一心
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 どうすれば小泉今日子のように、齢とともに魅力を増していけるのか―― その秘密を知ることは、現代を生きる私たちにとって大きな意味があるはず。

 日本文学研究者である助川幸逸郎氏が、現代社会における“小泉今日子”の存在を分析し、今の時代を生きる我々がいかにして“小泉今日子”的に生きるべきかを考察する。

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 大島弓子原作・宮沢りえ主演のテレビドラマ『グーグーだって猫である』のDVDが発売になりました。犬童一心が監督をつとめたこの作品は、昨年、WOWOWでオンエアされたものです。

 犬童一心は2008年にこの『グーグーだって猫である』を、映画化しています。そのときの主演は小泉今日子でした。

大島弓子の手になる原作は、作者とその愛猫グーグーの共同生活を描くエッセイ漫画です。小泉今日子版も宮沢りえ版も、犬童一心による映像では「漫画家の小島麻子」と「猫のグーグー」が主人公になっています。

ふたりの「小島麻子」の違いについて、犬童監督はこう話しています。

<一番違うのは、小泉さんは物凄い大島弓子さんのファンで、大島さんの漫画を全部何度も読んでいるんですよね。(中略)小泉さんは、自分の中の大島弓子像が多分想像しやすくて、明確に『こういう人だろう』という下地がある人。宮沢さんは、そういうところからこの役にアプローチしていないというか、脚本も漫画も読んでもらったのですが、そこから同世代の女性として自分と麻子を照らし合わせて考えていく>(注1)

 小泉今日子も宮沢りえも、数々の映画に主演し、輝かしい受賞歴を誇る「大女優」です。ただし、演技者としてのタイプはまったく異なります。役ごとに体をつつむオーラの色まで変えてしまうほど、小泉今日子はさまざまな人間になりきります(助川幸逸郎「変幻自在だった『アイドル時代の小泉今日子』」dot.<ドット>朝日新聞出版 参照)。対照的に、どの作品に出ていても、独特の「透明な華やかさ」で画面を彩るのが宮沢りえです。

「小島麻子」を演じても、ふたりの「大女優」は、それぞれの持ち味を全開にします。

 小泉今日子は、原作に出てくる大島弓子とおなじ髪型で登場します。その髪に、「ご飯つぶがついてる」と周りから突っこまれる場面が、映画版には二度あります。小泉今日子演じる「小島麻子」は、このエピソードからうかがえるとおりの女性です。不器用でうまく生きられず、「自分自身とは別の何か(漫画とか、小説とか)」に託さなければ自分を表現できない。他人に気をつかいすぎて空まわりするので、すっかり心を許せるのは愛猫だけである――少女漫画と猫のおかげでかろうじて生きているキャラクターを、小泉今日子はみごとに体現しています。

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