中国主導の国際開発金融機関であるアジアインフラ投資銀行(AIIB)の行方に注目が集まっている。米国と日本が参加を見送るなか、創設時加盟国の申請締め切りである3月末にかけて、英国をはじめ仏独など主要国が次々と参加を決めた。メディア上では様々な意見が飛び交っているが、“覇権の多極化”、“米国ドル覇権の崩壊”という世界史の大きな流れを踏まえると、どのような構図が見えてくるだろうか。

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 北京に本部を置く「アジアインフラ投資銀行」(以下、AIIB)は、アジア地域の道路や港湾、発電所などのインフラ開発に国際投資する事業を行う予定で、中国が2013年秋から設立を提唱し、14年10月に正式発足した。当初、創設時加盟国の参加申し込みを14年末に締め切る予定だったが、欧州勢の参加する可能性があったためか、創設時加盟国の申し込みを今年3月末まで延長していた(創設時から加盟した方が、銀行の基本的な運営に対する発言権が大きくなる)。

 これまで、国際金融機関といえば国際通貨基金(以下、IMF)と世界銀行という「ブレトンウッズ機関」を筆頭に、米国の覇権運営を補佐する存在だった。アジアではIMF世銀体制下に、日本が歴代の総裁職を占めてきたアジア開発銀行(ADB)がある。近年、中国やインド、ロシア、ブラジルなどの新興諸国(BRICSなど)が経済力をつけ、米国とその傘下の日欧の発言力が圧倒的な国際金融機関の運営体制を変えてほしい、新興諸国の発言力を増加してほしいと要請していた。2010年、IMFで、中国など新興諸国の発言力(出資比率)を増やす改革の方針が決まり、米政府(民主党オバマ政権)も署名したが、共和党主導の米議会が批准を拒否したまま、改革が座礁している。

 経済協力として見ると、アジアへのインフラ投資が足りないのだから、設立者が中国だからという理由で米日がAIIBに入らないのはおかしい。中国は、日本にも米国にも、AIIBへの加盟を誘っている。国際協力の経験が豊富な米日など先進国がAIIBに入り、中国による運営の下手なところを助けてやるのが筋だ。

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