「いまはピッチの中でも外でも、選手が自分で考える自由が与えられている。それは選手自身が考える力を試されているということです」

 自分で考えるのはプレーに限ったことではない。対戦相手のスカウティングは試合開始2時間前のミーティングで30分程度に編集したVTRを見るだけ。その理由を長谷部は次のように説明する。

「対戦相手の情報が欲しかったら個人で(VTRを)見ればいい。僕もパレスチナの試合は2試合見た。それがプロとしての姿勢」

 遠藤ら仲間と一緒に見る選手もいれば、長谷部のように一人で繰り返し見ている選手もいる。対戦相手の情報はスタッフから与えられるのではなく、必要に応じて自分自身で入手しろというのがアギーレ流だ。こうした姿勢は若手選手にも伝わったようで、昌子などはムードメーカーとして貢献した。

「僕ら一番下の世代が盛り上げようと、出られない選手同士で話しています。それが出られない選手の役割だと思うので、下が遠慮せずに声を出せば雰囲気も明るくなるでしょう。毎日がよい経験になっています」

 返す返すもベスト8で敗退したのは残念だったが、3月のテストマッチでは若手選手の招集が濃厚なだけに、新たなサプライズに期待したいところだ。最後にUAE戦後の香川のコメントを紹介しておこう。

「このサッカーにはすごく可能性を感じていました。本当に楽しかった。だからこそベスト4や決勝でやりあいたかったし、そこまで到達できなかったので申し訳ないです。やっていたことは楽しかったし、充実していました」

(サッカージャーナリスト・六川亨)