「弊社は補助金などの資金的な支援がなければ成立しない事業ではなく、会社として収益を上げ、事業として自立することが持続的な再生エネの普及と地域への貢献につながると考えています。発電不良による採算悪化などのリスクに対応できるように、資本金を厚めにしたり、メガソーラーによる売電で収益を確保したりするのもそのため。事業に余裕ができることで、採算の厳しい小規模の案件にも取り組むことができます。収益の核となるメガソーラーのおかげで事業の幅が広がりますね」と志澤副社長は語る。

 経営の基盤を固める「小田原メガソーラー市民発電所」は今年10月15日から発電が開始されたばかり。発電出力は984kW/hで、約300世帯の電力を賄える発電量となっている。また、年間で4,000万円超の売電収入を見込んでいる。さらに、隣接する土地に出力700kW程の大規模な太陽光発電設備の建設も予定しているという。

 メガソーラーに先駆けて今年1月から発電を開始した公共施設の屋根に設置された設備は、市内の2小学校および公民館の3ヵ所だ。発電出力はそれぞれ約51kW、約49kW、20kWの計120kWとなっている。また、来年1月には新たに2ヵ所での発電(計45kW)を予定している。

 こうした公共施設に太陽光発電設備の設置が進められている背景には、停電時や災害時に対応できる避難所の機能を持たせたいという市の方針もある。同社は太陽光発電の設備を設置した公共施設に、停電などの緊急時は電力を無料で使用できるよう設備設計している。また、夜間でも電気を使用できるように、太陽光発電設備を設置した小学校に蓄電池を寄付する予定だ。このような官民協働の取り組みは、災害に強い地域づくりにつながるだろう。

 今後の展開について志澤副社長はこう語る。
「市民や若者に向けて環境教育も実施していきたいですね。蓄電池の寄付もそうですけど、事業収益を地域に還元していきたい。新たな事業としては小水力発電にも取り組む予定です。また、次のステップとして他地域の再生エネ事業へのコンサルティングや出資などで支援して、他地域との連携や協力体制を築いていきたい」

 ほうとくエネルギーのような地域主導の再生エネ事業は、再生エネの取り組みが広がるだけでなく、住民や地元企業が関わるため、地域でお金が循環し、地域経済が活性化するメリットがある。自然エネルギーを活用する際、自分たちの土地の資源を見つめ直す作業は、自然や風土、歴史、文化面の価値を再発見することにもつながり、地域の新たな価値をつくり出す可能性もある。

こうした地域主導の再生エネの取り組みが一段と広がり、全国各地でそれぞれの地域が活性化するきっかけになることを期待したい。