青色発光ダイオード(LED)の開発に成功し、ノーベル物理学賞に輝いた米カリフォルニア大学の中村修二教授。子どものころからさぞかし秀才の誉れ高かったのかと思いきや、愛媛県立大洲高校時代の成績は30番台。学年で一番ではなかったという。

 中村さんが週刊誌「アエラ」(2005年4月25日号)で、高校時代のことを語っている。

「暗記ものが苦手でした。漢字や年号などを無意味に覚えようとすると頭が抵抗する。大好きな数学も、試験ではいつも時間が足りない。さっさと解いてしまう同級生のことを天才だと思っていました」

 中村さんは試験で数学の問題を解くとき、答案用紙に向かって、定理の証明から考えていた。その間、秀才たちは暗記した公式をあてはめて、要領よく解いていたのだと、後で知ったという。

 試験でよい成績を取るには、好きな科目を伸ばすより不得意科目の攻略が重要だ。制限時間内に1問でも多く解くため、難しい問題は後回しにする。そうした受験テクニックに長けた秀才たちが評価されるしくみが問題先送り型の官僚を生み出す――というのが中村さんの持論だ。

「試験の一番は、広く浅くのウルトラクイズ王でしかない。一番を頂点に序列化し、本人の夢や適性に関係なく進学先を割り振る。こんなバカなことに大事な中学高校時代を費やすのは、やめるべきです」

 これは、中村さん自身の苦い経験から出た言葉でもある。

 本当は理論物理学者になりたかったが、教師が勧めたのは徳島大学工学部。就職先の日亜化学工業で今回のノーベル賞につながる仕事をするが、その後会社を去り、特許料をめぐる訴訟を起こした。

 世界的な評価を得てからも、「米国の研究者仲間からみれば遅すぎたスタートが悔しい」と語っていた中村さん。今、ゆとり教育の見直しが進んでいるが、知識重視の試験では評価できない才能を埋もれさせるような教育への逆戻りだけは、あってはならない。