「2年でインフレ率2%」の物価目標を掲げる日銀は、7月14、15日の金融政策決定会合で、現在の大規模な金融緩和政策の継続を決定した。消費増税後、駆け込み需要の反動減が懸念されたが、それも一時的だとし、「景気は緩やかに回復している」との判断を据え置いている。

 我が国が長年悩み続けてきたデフレ脱却に向け、いまだかつてない量的質的緩和策を推し進める安倍内閣。しかし、日銀ウォッチャーの第一人者である加藤出氏は、著書『日銀、「出口」なし!』(朝日新書)でその判断に警鐘を鳴らしている。

 まず同書の冒頭で紹介されているのが、1976年にアメリカのロックバンド、イーグルスがリリースした名曲「ホテルカリフォルニア」の歌詞だ。

 砂漠のハイウェイを走っていた男が、暗闇の中にたたずむホテルを見つけ何日か滞在する。客たちはホテルで開かれている浮世離れした宴の虜になり、男もそのうち意識が朦朧とし始めるが、我に返ろうとホテルから抜け出そうとしても、夜警に呼び止められ外の世界に出ることはできない……。

 この歌詞にちなみ、米連邦準備制度理事会(FRB)の「量的緩和(QE)」、欧州中央銀行(ECB)の「無制限国債買い入れ」など世界の中央銀行の終わりの見えない“大盤振る舞い”を「ホテルカリフォルニア的金融政策」などと表現することがある。

 例えば2012年12月、テレビのインタビューで、ダラス連邦準備銀行のリチャード・フィッシャー総裁は FRBのQE3(量的緩和第3弾)に対し「我々はホテルカリフォルニア的金融政策のリスクに瀕している」と不安を吐露。「理論的には我々はこのプログラムから好きな時にチェックアウトできることになっている。しかし、我々はFRBのバランスシートを膨張させ続けており、実際はこの状況から抜け出すことはできないかもしれない」と述べている。

 そして著者も、同書の中で「日本銀行が現在行っている量的質的緩和策は、FRB以上にホテルカリフォルニア化する恐れがある」と警告している。日銀はFRBやBOE(イングランド銀行)以上に、大胆な金融政策を実施しているというのがその理由だ。日銀はマネタリーベースを増やすため、長期国債の保有額を増やしているが、その購入ペースは市場で国債が不足するほどの勢い。膨張し続ける日銀資産の中身の大半は、累積する巨額の赤字・日本国債以外の何物でもないわけだ。

「超金融緩和策はフリーランチ(ただ飯)ではない、という認識を、我々は持つ必要がある」(同書より)

 金融緩和政策は本来、構造改革までの“その場しのぎ”。「一時の便法」であるはずのものに頼りきりでいれば、いずれツケを払わされることは目に見えている。果たして、日銀が「ホテルカリフォルニア」の迷宮から抜け出す日はやってくるのだろうか。