宮崎駿監督が長編アニメ制作からの引退を発表した後どんな初仕事に取り組んでいるのか、「風の谷のナウシカ」から30年の間にスタジオジブリが世の中に与えた功罪とは何か、ジブリに惹かれて大企業を辞めて集まった社員たちの思いとは……。

 そんなスタジオジブリの秘話満載の週刊誌「アエラ」(朝日新聞出版)が8月4日に発売される。特別編集長を務めるのは、スタジオジブリのプロデューサー鈴木敏夫さん(65)。

「アエラの1号限りの編集長を務めてもらえませんか」

 3月に編集部からオファーしたことから、このコラボは始まった。本や雑誌の市場が縮小する中で、雑誌の可能性を探ろうとアエラが始めた「特別編集長」号は、今年1月に発売された、AKB48総合プロデューサー、秋元康さんの特別編集長号に続く第2弾だ。ジブリ作品を30年間世界中でヒットさせてきただけでなく、元雑誌編集者でもある鈴木さんなら、どんな雑誌を作るのか――。編集会議が始まった。

「アエラの読者はどんな人?」

「誰に向けて、何を伝えたいの?」

 鈴木さんによるアエラ分析からスタート。編集会議は、時に、何の関係もないような雑談や昔話にも及び、何度も繰り返された。日頃、効率的に無駄を省くことばかりが先に立ってしまうアエラ編集部員たちは、おもちゃ箱をひっくり返したような、脈略のない話の中からアイデアを見つけて行く会議のやり方自体が目から鱗だった。

 議論を重ねる中で出てきた、雑誌全体を貫くテーマは「日本はどうなる」。集団的自衛権の行使容認が閣議決定され、原発の先行きも不透明など、不安やが尽きない今だからこそ、真正面から将来について考えたいとの思いが、鈴木さんと編集部で一致した。

 元自民党幹事長・野中広務さんの集団的自衛権行使容認を巡る思い、ルポライター鎌田慧さんと中学生たちの原発とエネルギー問題に関する議論、作家・半藤一利さんがこの夏の思いを込めた宮崎駿さんへの手紙、ともに「団塊の世代」である社会学者の上野千鶴子さんと鈴木さんが、自分たち世代の今後について語りつくした対談など、さまざまな角度から「将来」を考える記事が満載だ。鈴木さんが編集長を務めたからこそできた、養老孟司さんと川上量生さんの対談による「ジブリ30年の功と罪」も収録。

 表紙は、三鷹の森ジブリ美術館で開催中の「クルミわり人形とネズミの王さま展」のために、宮崎さんが描き下ろした絵。メルヘンなジブリの世界観も、将来の課題についてのハードな議論も、1冊で両方を堪能できる内容になっている。