2万円だからこそにじみ出る人間味とは


 今回聞き取り調査をした中で一番哀愁を感じたのは、2万円をパチンコに使った男性である。マイナポイント2万円分の登録申請を済ませた彼は、財布に2万円が増えた気持ちになって、翌朝開店前からパチンコ店に並んでキャッシュで2万円の初期投資を行い、全額をパチンコ店に献上して店をあとにした。そして、「失われたマイナポイント2万円分を取り戻してやる」という決意のもと、また翌朝開店前からパチンコ店に並んだのであった。
 
 マイナポイント事業のそもそもの目的はマイナンバーカードの普及に加えて、経済活動の活性化であるとも掲げられている。その意味において、ポイント2万円分以上の支出もあり得るパチンコなどに興じた人は、マイナポイント事業への貢献度が普通の人より高いと言えよう。
 
 マイナポイントの“2万円”は、人の欲やワクワクがよく伝わってくる趣深い金額であった。


 これが10万円では、そうはいかなかっただろう。2万円だからこそにじみ出る人間くささがあり、「手の届く範囲のところでワクワクしてやろう」という人間の希望・願いが、2万円というボーダーによって試されたのであった。
 
 筆者はすでに2万円を楽しんだ先達の話を聞きながら、「何に使おうか」などと夢想し、しかしポイント付与の手続きを面倒がって、おそらく期限ギリギリの5月末に申請に行くことになりそうである。(フリーライター 武藤弘樹)