頭部の重さは、体重の約10%。柔軟性を失った首で重たい頭部を支えると、頚椎に非常に負荷がかかってしまうとのこと。

「ストレートネックが背骨の変形によって発生していたり、しびれのような神経症状が出ていたりするようであれば、治療を行うこともあります。しかし、実際は見た目の問題のみで痛みがないケースがほとんど。そうなると、日常生活で改善していくほかに方法がないため、医療機関で行える処置はほぼありません」

 軽くみられることも多いストレートネックだが、放っておくと頭痛や首こりといった症状だけでなく、頚椎椎間板ヘルニアや手足のしびれなどの病気の温床となってしまうという。また、長時間座って仕事をする人や、かがんだ状態で長く作業を行う人などは、ストレートネックに限らず、ねこ背に気を付けたほうが良さそうだ。

ねこ背の原因は
背骨だけにあらず

 ねこ背というと、すべて背骨に要因があるのではないかと思う人もいるかもしれない。しかし、高平氏は「筋肉と靭帯もねこ背の要因である」と指摘する。

「背骨は椎骨(頚椎や胸椎など)という小さい骨が独立して靭帯(じんたい)につながっています。下を向くと後ろの靭帯が引っ張られる状態になり、それが長く続くと靭帯の付着部から骨のとげが出て背骨が変形し、ねこ背を招きます。また、靭帯の外側には疲労のたまりやすい筋肉が存在しています。そのため、靭帯よりも短い時間でガチガチに固まってしまう筋肉に連動して靭帯も変性してしまい、ねこ背をもたらす要因となるのです」

 ほかにも、「筋膜リリース」などで一時期話題になった筋膜(ファシアの一部)も、ねこ背と深い関わりがあるのだとか。

「一つひとつの筋肉は、各々の関節をまたぐように存在していますが、それぞれの筋肉はファシアでつながっています。そのため、まずはファシアからほぐしていき、筋肉、靭帯と徐々に連動させて柔らかくしていくことが重要なのです」

 トップアスリートのイチローや大谷翔平は、高平氏から見ても体がとても柔らかく見えるそう。スポーツ後の筋肉は疲労によって固くなっているので、一流の選手ほどクーリングダウンにストレッチなどをしっかり行って、全身を柔らかくしているのだそうだ。

「ファシアが固くなる要因は、長時間の同じ姿勢。アスリートほどではなくとも、普段から体を動かしている人ほど、ねこ背は早く治るものです。ただ、普段は運動をしていない人が、体を急に動かしてしまうとけがにつながります。そのため、仕事が忙しく定期的に運動する時間が取れないビジネスパーソンほど、ねこ背の改善は時間をかけて継続していくことが重要になります」

右肩を前に突き出して上半身をひねっている。この体勢を20秒間キープしよう 画像提供:『ねこ背 何歳からでも自力で治せる!整形外科の名医が教える最新1分体操大全』(文響社)
右肩を前に突き出して上半身をひねっている。この体勢を20秒間キープしよう 画像提供:『ねこ背 何歳からでも自力で治せる!整形外科の名医が教える最新1分体操大全』(文響社)
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ねこ背改善に繋がる具体的な方法とは