日本人の「交渉の常識」が世界で通用しない理由 ライアン・ゴールドスティン弁護士×鮫島正洋弁護士 対談 (2/3) 〈ダイヤモンド・オンライン〉|AERA dot. (アエラドット)

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日本人の「交渉の常識」が世界で通用しない理由
ライアン・ゴールドスティン弁護士×鮫島正洋弁護士 対談

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ライアン・ゴールドスティンダイヤモンド・オンライン
進学塾鮫島正洋(さめじま・まさひろ)
1985年東京工業大学金属工学科卒業後、藤倉電線(現・フジクラ)に入社し、電線材料の開発に従事。91年弁理士試験に合格。92年日本アイ・ビー・エム入社。知的財産マネジメントに従事しながら、司法試験の勉強をし、96年司法試験に合格。97年退社して司法研修所に入所。99年第二東京弁護士会登録、弁護士事務所で働き始める。2004年内田・鮫島法律事務所を開設。近著に、『技術法務のススメ 事業戦略から考える知財・契約プラクティス』(日本加除出版)『知財戦略のススメ コモディティ化する時代に競争優位を築く』(共著、日経BP社)。

進学塾鮫島正洋(さめじま・まさひろ)
1985年東京工業大学金属工学科卒業後、藤倉電線(現・フジクラ)に入社し、電線材料の開発に従事。91年弁理士試験に合格。92年日本アイ・ビー・エム入社。知的財産マネジメントに従事しながら、司法試験の勉強をし、96年司法試験に合格。97年退社して司法研修所に入所。99年第二東京弁護士会登録、弁護士事務所で働き始める。2004年内田・鮫島法律事務所を開設。近著に、『技術法務のススメ 事業戦略から考える知財・契約プラクティス』(日本加除出版)『知財戦略のススメ コモディティ化する時代に競争優位を築く』(共著、日経BP社)。

ライアン・ゴールドスティン(Ryan S. Goldstein)
クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン外国法事務弁護士事務所東京オフィス代表カリフォルニア州弁護士
1971年シカゴ生まれ。1993~95年、早稲田大学大学院に留学。98年、ハーバード法科大学院修了。99年、アメリカの法律専門誌で「世界で最も恐れられる弁護士チーム」に選出された、クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン法律事務所(現)に入所。2005年に同事務所パートナーに就任。2007年に東京オフィスを開設。2010年に日本に常駐するとともに東京オフィス代表に就任した。東京大学大学院法学政治学研究科・法学部非常勤講師、早稲田大学大学院の客員講師などを歴任。

ライアン・ゴールドスティン(Ryan S. Goldstein)
クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン外国法事務弁護士事務所東京オフィス代表カリフォルニア州弁護士
1971年シカゴ生まれ。1993~95年、早稲田大学大学院に留学。98年、ハーバード法科大学院修了。99年、アメリカの法律専門誌で「世界で最も恐れられる弁護士チーム」に選出された、クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン法律事務所(現)に入所。2005年に同事務所パートナーに就任。2007年に東京オフィスを開設。2010年に日本に常駐するとともに東京オフィス代表に就任した。東京大学大学院法学政治学研究科・法学部非常勤講師、早稲田大学大学院の客員講師などを歴任。

交渉の武器 交渉プロフェッショナルの20原則

ライアン・ゴールドスティン

978-4478066959

amazonamazon.co.jp

ライアン すると、鮫島先生の役目がとても重要になってきますね。

鮫島 そういうことかもしれませんね。その関係性の中で、ベンチャー・中小企業が大企業に勝つ交渉をするための鍵は「いかに主張するか」と「いかに隠すか」の2点だと私は考えています。

ライアン 「いかに主張するか」と「いかに隠すか」?

鮫島 そうです。
「いかに主張するか」とは、端的にいえば「強い特許を取って、大企業側にしっかりとアピールする」ということ。どんなに素晴らしいテクノロジーを持っていても、取得した特許の範囲が狭い、つまり「弱い特許」であれば、資源に勝る大企業はその隙を簡単に突いて、似たようなものをつくれてしまいます。

 しかし、特許の範囲が広い、つまり「強い特許」を取ることができれば、大企業が真似をしようとしても「あれも特許に引っかかる、これも特許に引っかかる」となり、真似できない。

 だからベンチャー・中小企業側の知財戦略としては、「特許を強化し、その特許を強く主張する」ということが、大企業と対等以上に戦うためのひとつの鍵になります。

ライアン たしかに、「強い特許」は交渉の武器そのものですよね。では、もうひとつの鍵である「いかに隠すか」とは?

鮫島 ベンチャー・中小企業が持つテクノロジーの中には、あえて特許にせず「ブラックボックス」として隠しておいたほうがいいものもあります。

 たとえば、特許を取得しても他社の侵害を検出することが難しい知見、たとえば製造ノウハウのような技術が対象となっているような場合ですよね。そのような場合、特許の公開によりノウハウが流出してしまうのですが、侵害検出ができないから誰がどこでそのノウハウを模倣しているのかもわからない。

 そのときは、特許をとるのではなく、ノウハウを徹底的に隠す必要があります。そうして、「秘密を知るには、この会社と組むしかない」という状況をつくるのです。これが「いかに隠すか」ですね。「ブラックボックス」が交渉の武器になるわけです。

●グローバル・ビジネスの交渉のリアリズム

ライアン なるほど。「いかに主張するか」と「いかに隠すか」は非常に重要な戦略だと思います。でも現実には、その2つの戦略で黙る大企業はそう多くはないでしょう?

 ベンチャー・中小企業側が特許を持っているとわかっていても、「この規模の会社は、ウチのような大企業を訴えてこないだろう」と考えたら、強気で押してくる企業もあるのではないでしょうか?

鮫島 たしかに大企業側が「ウチを訴えられないだろう」と考えたら、無茶苦茶をやる可能性もゼロではないですね。

ライアン 実際に『下町ロケット』では、交渉上手な大企業が「裁判では勝てないだろうけれど、徹底的に戦って長期化させることで体力を奪う」という手に出ます。

 これはフィクションに限った話ではなく、現実でもこのような事例はたくさんありますよね。『交渉の武器』の中でも私は、「強者が優しく振る舞うことはない。強者に品格や優しさを求めてはいけない。強者はとにかくエゴを押し出してくるという前提で考えておかなければいけない」と述べています。

 もちろん、そうではない強者はいますし、それこそ真の強者だと思いますが、一方で、「強者はエゴを押し出してくる」というリアリズムを忘れてはいけないと思うんです。特に、グローバル・ビジネスではそれが紛れもない現実です。

鮫島 そこはもしかしたら、「日本企業同士の交渉」と「グローバルな交渉」で最も違う部分かもしれないですね。

「グローバルな交渉」ではもちろん、ライアン先生のおっしゃる考え方が主流です。ただ「日本企業同士の交渉」の場合、「相手もそんなにひどいことをしてこないだろう」という、日本特有の不思議な連帯感があるんですよ。

 日本において、日本の大企業がベンチャー・中小企業に「強者の権威」を振りかざして優位に事を運ぼうとすると、「あの企業は横暴極まりない」といった噂が広まって、国内ではビジネスがしづらくなるでしょう。

 だから「日本企業同士の交渉」は、いろいろなことが穏便に進みやすくなる。でもこの感覚を「グローバルな交渉」に持ち込んだら、大変なことになりますね。

ライアン そうそう。私は、それが言いたい。
 世界的大企業の中には、仕事で手を組むにあたって一切、交渉の余地をくれない企業もあります。譲歩は一切なく「契約書にサインをするか、それともその企業と手を組まないか」の2択を迫られる。そのように、「強者の権威」をフル活用する企業もあるんですよ。

 そのような企業を相手にしたときには、日本人であろうがアメリカ人であろうが、従うしかないかもしれない。ただ日本人には、「グローバルな交渉」でももっと強く戦ってほしい。強者の一方的な要求を押し返すような交渉戦略は必ずあるはずなんです。それを、私は日本企業と一緒に考えていきたいと願っています。


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