肉を注文しに自分でカウンターに行く「オーダーカット」のシステムなどがあり、客にとって同店はファストフードの位置付け。それに対して価格が高いというのだ。

 6月に実施した値下げキャンペーンが大好評だったこともあり、7月からは恒状的な値下げを断行した。平日のランチで、リブロース10オンスを23ドルから16ドルへと変更した。グラム換算して円レートに直すと、日本での価格よりも安い。

 日本の店舗は米国で調達する肉を使用しており、調達地である米国ではもっと安くするというのが「本来の姿」(川野氏)だという。米国でも驚くほどリーズナブルに、手軽に肉を楽しんでもらうためだ。

 一連の施策は、同チェーンの個性を守る一方、独自の日本式だけに固執せず現地のニーズに合わせ、さらに生命線である値ごろ感は日米共に徹底するというものだ。

 米国市場で成功を収めている日本の外食企業は少ない。日本の多くの外食企業が、米国で1店舗ずつ利益を固めながらゆっくり展開する中、一気呵成の展開は“非常識”に見える。

 ただ、海外経験が豊富なある外食企業首脳は、「米国で日本の外食企業が成功しないのは、少数店舗の展開にとどめて収益化できる規模に至らないから。いきなりの方向性は正しい」と評価する。

 NYでの集中出店は、特定の地域内に集中して経営効率を高めつつ、知名度を上げるというドミナント戦略であり、最終的な目標はフランチャイズ展開なども含めて全米に店舗を構えること。

 現地で指揮を執る川野氏は、まずは年内に全店で単月黒字の達成を目指すという。その成果が、全米制覇というアメリカンドリームへの“チケット”となる。