物件が契約できてもガスの開通が予定通りにいかないといったことは米国ではよくある話。日本とは勝手の違う習慣に、日本でのようなスピード出店が阻まれる。

 出店当初は、立ち食いスタイルや前菜なしといった日本での同チェーンのモデルをそのまま展開した。目新しいスタイルは現地メディアにも大きく取り上げられたが、先行して開店したその1号店以外は、いまだ収益体質になっていないのが実情だという。

●日本式否定の施策も 肉の値ごろ感は共通の生命線

 今年4月、一瀬社長の懐刀で営業企画を担当してきた役員の川野秀樹氏が米国の現地子会社に社長として送り込まれた。

 それまで現地社長だった槌山 隆氏が商社出身ならではの豪胆さで11店舗もの物件にめどを付ける一方、川野氏は現地の販売施策などを日本からコントロールしていた。

「出店」から「収益化」へステージが移った新体制下では、現地に受け入れられるよう、さまざまな施策を繰り出している。

 それは日本で成功したスタイルを否定するものも少なくない。例えば、日本式であるテーブルの間にある仕切りを取り外し、対面で座っても会話が弾むようにした。1人での来店も多い日本に対し、米国では2人以上での来店が多いからだ。

 メーンの肉に絞ったスタイルも米国の習慣に合わないため、デザートをメニューに追加。現地で流行している「もちアイス」を、10種類超のフレーバーで提供し始めた。さらには、これまた日本式の特徴であった前菜なしを改め、一部店舗で前菜の提供を始める。

 1号店はチップ不要で始めたが、2号店以降、チップ制を導入した。米国の従業員にとってチップは重要な収入。モチベーションの維持につながるためだ。チップ込み価格の設定は客にも不評だった。

 4月に米国でチェーンに対する評価を調査した。味やサービスに問題はなかったが、客が最も不満に感じていたのが価格であった。

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生命線である値ごろ感は日米共に徹底