●新しい始発駅は瞬く間に人気住宅地に

 例えば東京メトロ東西線では2000年に妙典駅が新設されたことで、行徳車両基地から出庫する列車の始発駅は行徳駅から妙典駅に変更された。始発列車に座って通勤できれば「混雑」という東西線唯一最大の欠点が解消するのだから、妙典は瞬く間に人気住宅地となった。

 一方、行徳駅は新駅開業によって駅の混雑こそ解消されたものの、魅力ある始発駅の座を失うことになった。西武池袋線では01年に練馬高野台駅始発の列車が設定されたが、12年に石神井公園駅まで高架複々線化工事が完了して練馬高野台は始発駅ではなくなった。元々の計画通りではあったものの、約10年にわたって設定されていた始発列車がなくなったことによる利用者の落胆は少なからずあっただろう。

 このように、始発駅変更をもたらす直通運転の拡大は、全ての利用者が手放しで喜べるものではないのだ。湘南新宿ラインのように全く新しい直通運転であればよいのだが、既存路線をつなぐ形の直通運転開始にあたっては、折り返し運転がなくなることによる着席チャンスの減少という「サービス低下」がたびたび不満の種となる。

 東急東横線は副都心線と直通する以前は渋谷駅で、東海道線は上野東京ラインができるまでは東京駅で全ての列車が折り返していたので、夜は1~2本待てば必ず座って帰ることができた。しかし、現在はほぼ全ての列車が直通してくるので、到着時には席は埋まってしまっているのである。

 今年度末に北綾瀬までの直通運転が開始される千代田線にしても同様だ。現在、千代田線の代々木上原方面は、朝のラッシュピーク前後は5分に1本、日中は10分に1本が綾瀬駅始発列車として設定されている。北綾瀬駅始発列車を設定するにあたって、JR直通の列車は減らせないから、綾瀬駅始発の列車が削減の対象となる。綾瀬始発を狙って着席通勤している人も多いため、綾瀬始発はどれくらい残るのか、今からヤキモキしている人も多いだろう。

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新線建設は難しい現代直通運転は今後も増える