●Uターン・Iターン転職が盛り上がらない本当の理由

 東京をはじめとする首都圏では、転職者の給与や待遇の決定における経営者の緊張感が非常に高まっています。現在は売り手市場なので、給与が安いと候補者にすぐ逃げられてしまうからです。

 これに対して地方企業の経営者は、緊張感の薄い人がまだ多い。もともとの給与相場が低いことに加え、とくにUターン転職の場合、何らかの事情があって帰郷する人が多いため、その弱みに付け込んで安い給与でオファーしてくるようなケースも見受けられます。
 これではなかなか優秀な人材が地方に移らず、Uターン・Iターン市場も盛り上がりません。見方を変えると単なる欠員補充の採用が多く、会社の成長に貢献してくれる高度人材の採用に取り組んでいないとも言えます。しかし、それでは成長が困難になるどころか経営環境が厳しくなるなかで、地方企業の生き残りはどんどん困難になっていきます。

 東京で年収1200万円だった人に「頑張って600万円出します」と言ってしまうようなケースもあります。これでは優秀な人材を東京から呼び込むことはできません。

 就職先の限られた地方のなかだけならそれで通用するのかもしれませんが、自社の業績や成長に良いインパクトを与えてくれる人材を採用しようとするのなら東京の企業との争奪戦になるので、戦いに勝てるオファーを用意する必要があります。

「いやいや、その給料では採用できません。1000万円とは言いませんが800万円は出す必要があります」と我々は人材市場の相場観をお話して一種の啓蒙活動をしたり、「この人を採用するとこんなインパクトが期待できます」と人材に対する期待値を上げてオファーの水準を上げてもらったりしています。

 地方経営者の人材に対する期待値を上げると共に、優秀な人材を口説いてUターン・Iターン転職のお手伝いをし、その会社の発展に貢献する。我々がそんな好循環を生み出すことがUターン・Iターン市場の活性化には重要だと考えています。

次のページ
年収1200万円で地方に転職した人も!