Aさんはそのとき思いました。「子どもたちに、父親がいないからといって引け目を感じるようにはさせたくない」と。そこで、塾に通わせたり、習い事をさせたり、希望する学校に進学させたりと、周りの子どもたちと同様の生活をさせたといいます。

 一方で、保険金はしばらく使わないと思っていたこと、そして少しでも増やしておきたいという思いもあり、2000万円ほど、投資に回していました。とはいえ、自分ではよく分からなかったため、証券会社のセールスマンに相談、言われるがままに日本株式で運用していました。

 こうした生活をしているうちに支出は増え、1ヵ月で50万円以上かかる月もありました。その結果、次第に赤字に陥ってしまう月が増えてしまい、夫が残してくれた保険金を切り崩して穴埋めしていました。

●子どもが18歳になった段階で減額される遺族基礎年金

 ところがです。一番上の子どもが18歳になったとき、状況が一変します。遺族年金の受給額が減ってきてしまったのです。

 会社員の遺族年金は、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」からなります。このうち、遺族厚生年金は故人の収入で生計を維持していた遺族が受給できるものですが、遺族基礎年金を受給するには条件があり、「子どもがいる配偶者」または「子」です。

 基礎年金は、基本的な受給額のほかに、子ども一人当たりの加算額があります。今でいえば、基本が年額77万9300円、これに第一子、第二子は22万4300円、第三子が7万4800円です。当時の金額ははっきりしませんが、今の基準に置き換えると年金額は130万円程になります。

 しかし、子どもが18歳を過ぎると支給額は減ってしまいます。22万4300円ずつ支給額が減り、子どもが全員18歳を超えてしまうと、基礎年金自体の受給ができなくなる仕組みです。

 加えて、同じようなタイミングで労災からもらっていた保険金も終了していきます。つまり、今までの収入源の大部分が、近いうちにすべてなくなってしまうのです。

次のページ
生活費の圧縮を図り奨学金の活用も検討すべき